2007年6月6日

モード・チューニング(モード・マッチング)3

以前B0を測定するため、筆者が椅子に乗って(楽器を吊るすための)縄を梁にかけていたら、妻が血相を変えて止めに来た。万が一にも楽器が落ちてはならないと丈夫な縄を使ったのが誤解を招いたようだ。
楽器を宙吊りにするしないはその時々で判断頂くとして、色々大変だが、ともかくB0のピッチを調べる。

着目するもう1つのピッチTPは、テールピースの振動ピッチである。TPを測定する場合は、楽器は作業台の上に寝かせていても良いようだ。開放弦が響かないように弦をダンプして、テールピースをそっとタップするか、テールピースのエッジをそっとはじく。カンカンというテールピース木部だけのモードではなく、ドンドンというテールピース全体が振動するモードがTPであることに注意する。TPはテールピースの重さや形状、テールガットの長さ、弦のテンション、サドルの高さ、テールガットの間隔などを変えると変化する。

これでB0とTPが手に入った。これらの振動モードの関係を調整することがモード・チューニングだ。B0との関係では、先のHutchinsらの資料では、TPはB0/2にマッチさせるのが良いという。しかし、コントラバスの場合は少し事情が違っていて、TPとB0のピッチは近いことが多いようだ。勿論これはケースバイケースで、一概には言えないが、筆者の場合はTPをB0に一致させるという方向でチューニングを行っている。

B0はネック/指板の振動モードだから、指板やネックを加工しなければピッチを変えられない。一方TPはテールピースを交換したり、テールガットの長さを変える事などで比較的簡単に変えられる。TPを変化させてB0に一致させるというのが、最も簡単にできるモード・チューニングの例だ。

※楽器のセットアップは、専門家を頼っていただきたい。ここでの記述は完全ではなく簡略化されたもので、例えば、テールガットの長さを調整するにも、適切な範囲がある。また、テールガットの長さを変えるための実際の作業には魂柱が倒れるリスクもある。

3 件のコメント:

むねたけまさひろ さんのコメント...

はじまして。いつも興味深く拝見させていただいてます。毎回の更新を楽しみにしている一アマバス弾きです。
一つご教授いただけたらと思いコメントさせていただきました。

TPを変えるのにテールガットの長さで変えられるとの事ですが一般的に、テールガットを長くとるとピッチは下がる?それとも上がる?
いかかでしょうか?

yamaguchi さんのコメント...

bassmanさん、はじめまして。コメントありがとうございます。毎回読んで頂いているとのことで、とても嬉しく思っています。これからもどうぞ宜しくお願いします。

お尋ねのTPの件ですが、通常はテールガットを長くするとTPのピッチは下がります。音が低くなると言う事です。ただしテールガットを極端に長くしすぎると、駒とテールピースの間が狭くなりすぎますので注意が必要です。

その他のTPのピッチを下げる方法としては、サドル上でのテールガットの間隔を狭くする、テールピースの裏に重りをつける等があります。勿論、テールピース自体を重いものに交換しても同じ効果があります。

実際にモード・チューニングを行う時には、これらの方法を組み合わせてより良い解を探っています。

むねたけまさひろ さんのコメント...

早速、ご回答ありがとうございます。
なるほど、サドル上でのワイヤーの間隔とは、おもしろいですね。勉強になります。楽しみながらいろいろと試行錯誤してみます。