2008年2月2日

駒足のフィット

楽器のセットアップは、例えて言えば、演奏に似ているような気がする。
演奏家は、作品を前にして作曲家の意図を汲み取ろうと努力し、再現する。筆者には、製作家の意図を汲み取るほどの能力は無いけれども、楽器を前にして、その楽器が経てきた時間や、それを製作した、或いは弾いてきた人々のことを想像する。プレッシャーを感じるわけである。結局、人は自分の出来ることをするしかないようである。

ところで、楽器がその能力を十分に発揮するためには、駒の足が表板にフィットしている必要がある。

駒足がフィットしていないと、局所的にテンションが伝わることになって、表板を傷つける可能性がある。また、弦のテンションは駒足を介して、楽器の表板に伝わるため、フィットが悪ければ駒足が表板を変形させて、余計なストレスを与える事になり、本来意図された楽器の鳴りを変えてしまう可能性がある。

駒足のフィットは、どのような条件で行うべきだろうか。駒足の接する部分は曲面であるため、駒にテンションがかかれば、表板の曲面に沿って駒の脚は開く。テンションの無い状態でフィットする事が理想的かどうかという問題である。

駒の脚が開いた状態を再現しつつフィットするために、駒の脚の間に入れる道具も市販されている。この道具で脚の間隔を広げた状態にして、フィットさせるわけである。この場合には、道具で広げた状態が、実際の状態をどのくらい忠実に再現しているかが問われる。

筆者は、この道具は使用せず、手で押し付ける方法でフィットする。駒を押さえ付けて、フィットの感触を確かめる。この場合には、手で確かめる感触が正当なものかどうかが問われる事になる。具体的な内容には触れないが、この方法では魂柱を仮に立てておく必要がある。

いずれの方法をとるにしても、正確な作業を追及すれば、結果は音として現れるのではないだろうか。たとえ寄与が少しであっても、このような細部の積み重ねが、楽器の能力を損なわないセットアップにつながるのではなかろうか。

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