2008年5月19日

N氏の楽器10---チューニングマシン(つづきのつづき)


マイナスネジが好きだ。

と言うと、妻は「でたよ」という顔をする。余談だが、日本でのプラスマイナスという言い方は分かりやすくて良いのではなかろうか。phillipsやslottedと言うより、よっぽどスマートな気がする。

プラスネジの方が作業性も良いし、締め付けのトルクも高くできる。何と言っても、プラスはドライバーが安定するので、圧倒的にリスクが少ない。マイナスネジの溝をドライバーの先が滑り、周囲を傷つけた経験のある方も多いのではなかろうか。特に電動工具を使用する場合には顕著である。さらに、マイナスネジの場合には、ぴったり合うドライバーを見つけるのが難しい気がする。プラスの場合には、規格がはっきりしていて、2、3種類揃えれば大抵間に合う。しかし、マイナスの場合には、ネジ側の溝のばらつきが大きいような気がする。もっとも、手持ちに合うものが無ければ、ドライバーの方をグラインダーで削って調整するのも簡単ではある。

今日、マイナスネジは駆逐された感があり、特殊な用途でしか見かける事が無い。入手もなかなか難しく、その辺で買ってくるという訳にはいかない。機能的にはプラスが圧倒的に優れていると言う事であろう。しかし、マイナスネジの、クラシカルですっきりした外観には捨てがたい魅力がある。コントラバスのチューニングマシンにも色々あるけれども、スタンダードな外観を持つものであれば、マイナスネジがよく似合う気がする。プラスネジの無かった時代の楽器であれば、マイナスを使う意味も増してくるのではなかろうか。

N氏の楽器では、元のネジは木質部分への掛かりが少なかったので、少し長めのネジに交換する事にした。折角交換するならと、マイナスネジを使用し、仕上がりをチェックしていると、後ろから視線を感じた。「でたよ」である。

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