2008年5月4日

N氏の楽器3---サドル


話が前後するが、N氏の楽器では、サドルが浮いて駒の方に倒れかかっていた。

写真右は、サドルを取り除いた状態である。サドルの接着は既に切れており、接着面には、サドルの一部が欠けて残っていた。サドルの両脇にクリアランスが無く、ぴっちり入っていた事に気をつければ、道具を使うまでも無く外れる状態であった。幸運な事にサドルクラックは入っていなかった。

この楽器の場合には、サドルの大きさの割に高さが高いことが原因で倒れてきたのではないかと思う。サドルが駒側に倒れてくるのは、ハイサドルでは良く聞くことで、テールガットから受ける力の方向に偏りがある状態では、然るべき補強がなければ、サドルが倒れる可能性が高くなるのではないだろうか。ハイサドルの場合には、サドルをエンドピン方向に延長するなどしてバランスをとるが、通常のサドルの場合には、音や表板へのテンション等の条件に問題が無ければ、サドルの高さのバランスをとるのがよいのではないだろうか。

表板の変形が少なかったため、表板には手を加えず、サドルの方を接触面の形に削ってフィットすることにした。サドルの高さを低くする過程で、サドルの欠けた部分も修正でき、最後に両脇にクリアランスをとった。サドルの形は、極力もとの雰囲気を保存するように努めたが、テールガットが通る面に関しては、若干の修正を加えた。

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