2009年1月11日


楽器の肩の部分は手や腕が触れるので、傷み易いところである。

この楽器の表板と側板の間は、見た目はついているようでも、ナイフを入れるとゆっくりと入っていく状態だった。汚れや膠やホコリなどが混ざったようなもので塞がれていたようである。接着面を綺麗にしてから、膠を入れたが、圧締の途中で、外ライニングも浮いている事が分かり、急遽やりなおしである。

コントラバスの場合は内側だけでなく外側にライニングがついているものが有る。今回は内側は問題無かったが、外ライニングと側板の間は剥がれていて、汚れで塞がっていた。ライニングの表板側は少し変形があり、表板には密着しないので、隙間には埋め木が入れられていた。最初は表板のダブリングかと思ったが、ライニング側のものであった。

この楽器のライニングは、側板だけでなく表板の歪みに添って複雑に曲がっているので、出来るだけ表板に密着するように努力して、残った隙間は元の通り木で埋める事にした。元の埋め木は表板に合わせて木口埋めだったが、ライニングの問題なので今回は木端埋めにした。上側の写真で見えるように、埋め木を入れた後に表板の汚れを取ると白く木地が出てきた。ニスの様に見えていた表板の色は大部分が汚れで、実際にはこの部分の表板のニスは殆ど残っていなかったようである。埋め木の色を合わせ、硬めのニスを塗り、周辺のニスも少しリタッチした。写真の右下の方には、いつ頃のものか大きな補修跡も見えるが、この部分には剥がれや緩みは無いようであった。

2 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

初めて書き込ませていただきます。
過去ログ等を読ませていただきましたが
詳細ですね~。
Cbを所有して弾く者として嬉しい限りです。
今回の剥がれも症状や作業内容が細かく書かれていて「プロ」だなと低頭の思いで読ませていただきました。
最近購入先楽器店の対応には閉口することが多いです。(私がうるさい客なのかな?)
時間と手持ちがある時に一度私の楽器も診ていただきたいなと正直に思っている所です。
もちろん先に連絡は入れますが(福岡なので距離がありますから・・・。)

yamaguchi さんのコメント...

メルクリウスさんコメントありがとうございます。

楽器屋さんとは、お互い悪意は無くても、相性の問題もあるかも知れません。ある程度は時間もかけながら、信頼関係を作って行ければ良いと思うのですが、一方で、時代と言いますか、楽器に限らないのですが、時間をかけて仕事を追求する事が割に合いにくいと言う事はあるような気がします。

さらに、コントラバスは、大きいと言うだけでコストがかかってしまうのが辛いところで、この事が、修理やメンテナンスに影響を与えていることもあるかもしれません。ご要望に添えるかどうか分かりませんが、もし必要な事があれば遠慮無くご連絡下さい。