2009年1月17日

ペグボックス


特に構造的には問題が無いという事でお預かりしても、作業を行ううちに色々と問題が出てきて、仕上がりが長引くケースがつづいている。

こうなると、オーナーの方も不安になるのでは無いかと思うし、作業を行う側としても出口がどんどん遠のいて行って辛い事になってしまうが、一旦泳ぎ始めたら、岸に着くまで泳ぎきるかしかない。こんな時でも、オーナーの方々が信頼して待ってくださっている事には本当に感謝している。

肩の補修が終わり、ナットを外してみると、スクロールチークに割れが入っていた。以前にも書いたが、この部分には弦のテンションの全てがかかっているので、見なかったことには出来ない。仮に割れが今以上に進行しないとしても、この部分の強度が不足すると、楽器の効率は落ちるのではないかという気がする。師匠は良く楽器を車に例えるが、剛性感がない感じになるような感じがする。割れをクリーニングして膠を入れたが、今回は上手くつかなかった。恐らく割れ自体が古く、割れた面が酸化して脆くなっている上、割れた面同士を密着させようとすると、内部に応力が残ってしまうのでは無いかと思われた。

割れの部分を取り除き、新たな埋め木を入れて接着の強度を出す事にした。接着面のクリープを防ぐためのピンも入れた。この楽器のチューニングマシンはチロリアンタイプなので、プレートでピンが隠れる場所を選んだが、プレートを止めるネジ穴との兼ね合いで、スペースはかなり厳しかった。

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