2009年1月22日

ネックの補修


スクロールチークの補修が終わり、特に問題が無ければ、指板のドレッシングを行う予定だった。

しかし、どうもネックを持った感じが良くない。剛性感が不足している感じで、指板とネックの合わせ目が直線ではないし、ナットの位置がペグボックス端からずれているのも気になる。指板はしっかりついているように見えるものの、部分的には怪しいところもあるようだ。

状況としては大変疑わしいけれども、あからさまに指板が剥がれてはいないし、機能としては使える状態である。現にオーナーのかたは使ってこられた訳だから、補修は必要無いと思われるかもしれない。こういう状況では、人の信頼が本当に身に染みる。これこれの訳で指板を付け直したほうが良いのではないかとお伝えすると、快く了解して下さった。

指板は思ったよりもしっかりついていて、自分の見立てが間違っていたのではないかと思ったが、外してみると、ネックの内部に沢山の割れが入っていた。中心の割れには以前補修した跡があり、流し込んだ補修材料が黄変している。ここからは推測になるが、こういう干割れのような割れは、ネックを製作する材料の段階では既に入っていたのではなかろうか。割れの部分は落ちると踏んで製作したが、割れが残ってしまったかのようである。見えるところに達している割れが少ないので、補修して使おうとしたのではなかろうか。先日のナット下のペグボックスチークの割れも、結局これと同種の割れのようである。

割れは多数あり、一つずつ補修して行く事にした。同時に、ネックの反りの矯正も進める。かなり時間が経っているようなので、反りは十分に戻らないかもしれない。最も根本的な修理方法は継ぎネックということになると思うが、費用がかさむ。この次にネック周辺に補修が必要になったら、その時は継ぎネックという事になるのではないかと思う。

2 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

新年早々から紹介されてる楽器の所有者です。手間をかけて頂いた事は戻ってきた楽器を見れば一目瞭然(一弾瞭然?)ですが、まさか楽器を立たせて修理がされてたとは想像外でした(笑)

今回、初めての依頼でしたが、細かいチェックとそれに対する対処と、納得いく対応をして頂いて本当に感謝しています。古い楽器のためトラブルも多かったですが、一つ一つ丁寧に潰していかれる姿勢には頭が下がります。

また半年後くらいに健康チェックをしてもらわないとですね。その節はよろしくお願いします。

yamaguchi さんのコメント...

熊本Nさんコメントありがとうございます。

スタンドに置いてあれば、立っていても変に感じないのですが、作業台の上だとまた趣が違いました。いろいろ至らない事もあると思いますが、育てると思って長い目でお付き合いをよろしくお願いします。

やはり楽器に教えられている感じがします。例えが適切でないかもしれませんが、セットアップする立場は、作曲家に対する演奏家の立場に似ているように思います。