2009年3月12日

側板


古い楽器にリブ(側板)の割れは付きもののようだ。

蝶ちぎりの楽器にも割れているところがあった。リブの補修では、楽器のテンションを開放する必要があるし、接着面に目違いが生じないようにしなくてはならない。

今回のケースは、割れたというより、古い割れを修理した部分のうち、パッチの当たっていない所が開いていたというべきかもしれない。リブは薄く、接着面積が小さいため、何らかの補強をしないと開く事もある。筆者は、f孔から作業する場合には、リネンパッチを使う事が多い。リネンパッチはヘビーにならず、曲面にもよくフィットする。場所にもよるが、木質のパッチをf孔からの作業で完全にフィットさせるのは難しく、フィットしていないパッチは後々トラブルのもとになりやすいのではなかろうか。ただ、リネンパッチは湿度の影響を受けやすいので、場合によっては、使う膠にも配慮が必要になるかもしれない。

2 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

あいかわらず楽しみに拝見しております。

コントラバスに限らず、木製の楽器にとって「割れ」とは可能ならば避けたいが避けることのできない現象だと思われますが、一方で、個人的には割れた跡がたくさんあるオールド楽器などには畏敬の念すら抱いてしまいます。
私だけかもしれませんが、ある程度古い楽器は割れがあるほうが、百戦錬磨のような気がして凄みがあるように思えます。勿論、機械的な強度は格段におちてしまっているとは思いますが。

もちろん、割れた痕跡をのこさず綺麗に治してしまうべきでしょうが、なんだかもったいない気がします(笑)

yamaguchi さんのコメント...

きゃっつさんいつもご覧いただいてありがとうございます。

おっしゃる通り、古い楽器の時代を経た雰囲気は何とも言えません。昔のウイスキーのCMではないですが、割れの一つ一つに積み重なった歴史を描くことができます。割れを本当に見た目に分からないように修理するためには相当に高い技術が必要で、誰もができる事ではないようです。私にはそこまでの技量はありませんが、ただ、誠実に行われた補修なら、少なくとも好感の持てる外見になるのではないかと思います。コントラバスの場合は、楽器が大きいので材料の伸縮の影響が大きく割れやすいと思いますし、割れのサイズが大きいので、コストがかかるという事情はあるかも知れません。

写真の楽器はかなり補修の数が多いのですが、それだけの補修をしてでも使いたいと思わせる、魅力のある楽器だとも言えます。修理して物を大切に使うというのは、本当はごく当たり前のことで、修理跡のある楽器にはその当たり前のことを教えてもらっているようにも思います。