2009年5月17日

チューニングマシンの配置


話が前後するが、ブッシングすると、新しくつけるチューニングマシンを好きなように配置することができる。写真上は、仕上がったペグボックスである。

好きなように、と言っても実際はかなり厳しい制約がある。まず第一は、ペグボックス内で、軸が他の弦と(なるべく)干渉しないようにしなくてはならない。次に、ペグ自体がなるべく互いに近寄りすぎない方が良いと思う。不必要に離れるのは良くないが、ワインダーを使うときにはペグの取っ手が近すぎると使いにくい。これに加えて、軸とペグボックスの底とのクリアランスを確保し、チューニングマシンのプレートがスクロールチークからはみ出さない範囲に穴を開けなくてはならない。

現実には、第一の条件の、弦の干渉を避ける事すらできないことも多い。殆どは、ペグボックスの設計とペグの軸の直径によって決まってしまうためである。良く見かけるのは、D線とG線の軸が干渉しているケースで、詳しく説明はしないが、G線とD線がどこかでクロスするので、弦をうまく配置しにくい。

今回はGペグの軸をなるべく低くし、Dペグの軸をできるだけ高くしたうえで、Aペグの軸でD線を持ち上げ、G軸とD線が干渉しないように配置した。D線とG軸の間に弦一本分の空間ができたので、G線の巻き部分がD線に当たらない。

やってみたことはないが、チューニングマシンの配置があまりうまくない楽器でも、弦を巻くマシンを入れ替えることで干渉を避けている人もいるようだ。例えば、G線を通常D線が入るペグに巻き、D線はG線のペグに巻くということのようである。ペグ位置が変わるので、あまり気分は良くない気がするが、他に手段がない場合には試す価値があるかもしれない。

ペグボックス内で、悠々自適なのは大体においてE線で、他の弦に干渉することもされることも少ない。

2 件のコメント:

Bass爺 さんのコメント...

美しい、実に美しいですな。ペグボックスの中にこれだけ整然と並んだ4本の弦というのは見たことがない。

こちらのリンク先にもなっている外国の Bass Shop のコントラバスの写真を眺めるのはなかなかに楽しいが、ときどき4本の弦がナットから急角度で折れ曲がっているのを見かける。これではナットの溝が削られて広がってしまうのではとついつい気になってしまう。

それにしても「Aペグの軸でD線を持ち上げ」る作戦があるとは知らなんだ。実はわしの楽器もD線がAペグの軸に引っかかってしまう。弦をいじるたびに、軸の位置が間違っておる、これでもマイスターかとぶつぶつ文句を言っていたが、これからはこの位置関係を積極的に活用した弦の張り方を工夫してみることとしよう。

それにしても美しい。「過ぎたるに越したことはない」とは、このような仕事ぶりのことかもしれん。

yamaguchi さんのコメント...

Bass爺さんコメントありがとうございます。

おっしゃるとおり、綺麗に並ぶと気持ちが良いものだと思います。ペグボックスに、干渉をさけるための弦を持ち上げる棒を渡してある楽器がありますが、それにヒントを得た配置です。ですので一般的に行われている「作戦」なのかどうかは分かりません。

全ての弦が干渉しないような配置が最善ですが、どうしても避けられないのであれば、より都合のよい干渉の仕方で配置できないかということになりました。お持ちの楽器でも、同様になっているとの事ですので、配慮があったのかもしれません。

マイスターの資格を持っておられるような方なら、広い視野をお持ちだと思うので、色々な条件を考慮した結果という可能性もあるのではないでしょうか。それだけ、配置の条件がシビアなのかもしれません。

いつも温かい言葉をありがとうございます。叱咤激励と思って読ませていただいています。