2009年11月13日

古色

チューニングマシンは、使いやすく手入れされているのが一番で、見た目は二番かもしれない。

オーナーの方の希望にもよるが、古いチューニングマシンなら、なるべく時代を残しつつ綺麗にする。古くて良く手入れされた機械は良いものだ。新品のチューニングマシンも嬉しいものだが、もともとの作りが良かったり、特色のあるマシンなら、手入れして長く使いたい。

たいていの場合、古いチューニングマシンのギアの歯の間には、油とほこりが固く固まったものが詰まっている。もし、全体をピカピカに磨いてしまうなら、有る程度強硬な手段もとれるが、一つ一つ取り除く事もある。世の中を変えるとも思えない地味な作業である。真鍮製のパーツであれば、緑青の部分は取り除きたいけれども、表面の味は残したい。スチールのパーツであれば、汚くなったさび部分は取り除きたいが、全部をピカピカに磨いてしまうと時代が無くなってしまう。メッキパーツや、普段からよく磨かれていて光っている部分は、基本的には綺麗にしてしまう方向で、錆や酸化した表面のテクスチャは生かしながら、見た目が良くなるよう努力する。
写真の奥側が作業前で、緑青で少し緑がかっている。緑っぽいのが取れるだけでも、良い感じになると思う。家人の反応は薄かった。一見すればあまり変化は無いが、各部分の汚れやゴミが取り除かれ、動作は快調になった。
もともと、チューニングマシンの手入れを行ったのは、外観のためではなく、動作の問題だったので、快調になったのが一番だ。反応が薄くても良いのである。チューニングマシンが固い理由はさまざまで、今回は、対向するチューニングマシンの軸が長く、写真のようにプレートと軸が干渉していたのも一因であった。スクロールチークは、軸方向が板目面だから、年を経るにつれてスクロールチークが収縮して、幅が狭くなったのかもしれない。作られた当初は干渉していなかった可能性もある。
チューニングマシンの各部は、使えば減ってくるから、ギアのかみ合わせ部分の当たり方も変化してくる。この楽器では、ウォームギアの飾り部分との干渉も発生していた。なるべく違和感のないように干渉部分を落として、ようやく使いやすい感じになった。

2 件のコメント:

るいだ さんのコメント...

古色…私は真鍮の酸化した少しくすんだ色が好きですね
主に糸巻きの話題でしたので、古色とは直接関係無いかも知れませんが、質問を。
ある時弦を張り替えますとギア比にもよるかも知れませんがある部分の歯車を酷使します。ということは歯車を長く使うには弦の張替え毎に歯車のすべての部分がまんべんなくウォームに当たるように配慮したほうが良いのでしょうか?

yamaguchi さんのコメント...

るいださんコメントありがとうございます。

真鍮は光っていても、くすんでいても良いですね。使い込まれて、手で擦れた感じがまた良いです。昔の病院の扉の取っ手が真鍮なのは、殺菌作用もあるからと聞いた事がありますが、本当でしょうか。

確かに、おっしゃるとおり、一旦弦がはられると、歯車の特定の部分がウォームギアに当たる事になると思います。現実には、巻き終わりの場所をコントロールするのはなかなか難しいと思いますので、そこまでは気にしなくても大丈夫ではないでしょうか。

ブログの写真のマシンは、100年位経った楽器のものです。オリジナルかどうかは分かりませんが、かなりの年月を経ていて、歯車はかなり摩耗していました。ウォームギアと当たる部分の歯車の厚みが、元の半分以下になっている所もありました。もちろん多少の偏りはありますが、これだけ使われてきた(減った)マシンでも、特定の場所だけが極端に減っている感じは有りませんでした。

この事から考えると、長い目で見れば、歯車は大体均等に減って行くものだと考えても良いように思います。

真鍮の粉が沢山出たりして、短期的に目に見えて減っていくようなら、使い方の問題ではなく、どこかにトラブルがあるはずだと思います。