2010年1月6日

足りないくらいで


ニスの補修は、良いかどうかは別にして、出来の悪さは専門家でなくても分かりやすい。

コントラバスのG側は、床に触れる機会が多いので傷が多く、木部に達している事もある。これを完全に補修しようとすると、木部から補修しなくてはならず、オリジナルのニスを取り除く量も増えてしまう。

名人ならば、跡形もなく全てが無かった事になるような仕事ができるのかもしれないが、私の場合は、やりすぎないように気を付ける位である。
ニスの目的は、美観と表面の保護である。楽器は使えば必ず傷は増える。構造に影響のない傷であれば、有る程度は楽器の一部と考えて受け入れる選択肢もあって良いのではないだろうか。人の感覚は敏感で、本当に補修したのか疑われる位の補修でも、何となく綺麗に手入れされている感じは分かる。写真は上が補修前のもので、下が補修が進んだ状態である。少しずつ全体に渡って、無くなってしまった部分を補うように補修する。

オーナーの方の要望で、以前に補修されたニスの再補修も一部行った。以前に、赤い色の濃いニスで補修された部分で、使われたニスが目立ってしまっている。タッチアップに使われた色の濃いニスをできるだけ取り除き、色を合わせて補修した。

赤のニスは一部木質にも達しているので、下の補修後の写真で分かるように、完全には取り除けなかった。一度強くなってしまった赤を、色を足して消すことは難しい。目立たなくなったとは思うが、この結果で本当に良いか一度見て頂いた方が良いと思い、何箇所かあるうちの、最も目立つものを補修した。

ニスの補修が終わり、最終的に音のチェックをして、全てのセットアップを終え、楽器をお送りした。

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