2010年2月28日

ハイサドルの効果

ハイサドルの機能は、表板へのダウンスラストを減らすことだ。

サドルの高さが高ければ、駒が表板を押さえつける力は減る。ハイサドルの働きは単純でも、どのような目的で導入するかは、その楽器による。表板の損傷を防ぐ、高音と低音の音量のバランスを調整する、楽器の反応を変える等があり、音も変わる。換言すれば、サドルを高くするだけでも、様々な要素に同時に影響を与えてしまうということである。良い方向にだけ変化するとは限らない。

今回の楽器に対しては、最終的に少し高めの設定にした。スチール弦からガット弦に変えただけで、弦のテンションは小さくなる。当初は、あまり高くする必要はないかもしれないと予想していた。結果は高めで良いようであった。後は、演奏される方のスタイルや好みによって調整するレベルと判断した。一般には、楽器にかかるテンションを低くすれば、楽器はよりフリーな感じになる。しかし、やりすぎれば音のフォーカスは甘くなる方向に変化する事が多いようだ。結局はバランスであり、どの位のテンションが良いのかは楽器や演奏スタイルによって判断する必要がある。

話は変わるが、エンドピンのシャンクは、今回の太いテールガット用に特注したものだということで、金属製の本体に黒檀が組み合わせてある。

3 件のコメント:

石川滋 さんのコメント...

どうもどうも!いつも興味深く記事を読んでます。
出ましたね、ハイサドル。
ご存知のように僕の現在使っている楽器(オーケストラ所有の5弦含め)4台中3台はハイサドルつきです。最初からついていたものはなく、全部僕が楽器屋さんと相談の上つけてもらったわけで、そういう意味では使用前使用後、両方共知っているわけです。僕の場合、3台ともハイサドルにして正解でした。
プレイヤーとしては、やはりまず左手に必要異常なresistance(抵抗)がある場合、特にこのハイサドルがほしくなります。右手に関しても同様で、弦が弓を若干はねつけるほどのテンションがある場合にも同様です。
実は、今度バッハの録音に使おうと思っているオールドイタリアン(4台中の唯一のノーマルサドル仕様)が少しそのような傾向があります。はなはだしくはないのですが、バッハの無伴奏のような究極の曲に取り組んでいると、そのテンションが演奏者には拡大されて感じられるのかもしれません。
というわけで、今週ドイツのある楽器屋(よい評判を友人から聞いた)にその楽器を持っていきます。相談の上、いけそうならハイサドルもつけてもらおうと思っています。あと絶対してもらう事は、指板を削ってもらう事。他にもあれこれ相談し、先方の意見も聞こうと思っています。

石川滋 さんのコメント...

誤字
必要異常⇒必要以上
外国暮らしが長いですが、これくらいの漢字はまだ覚えています。失礼しました。

yamaguchi さんのコメント...

石川さんコメントありがとうございます。

ハイサドルに関しては、楽器にかかっているテンションを和らげるので、右手と関連するイメージはありましたが、左手に感じる抵抗というのは、私にとっては新鮮な示唆です。原理を考える時に、単純化して考えるだけでは、危険もあると自戒しました。

弦を張って静止した状態を考えると、調弦が同じであれば、ハイサドルがあっても弦の張力には変化がないので、これだけでは、左手に影響があると想像するのは難しいです。
しかし、弾いている状態では、ネックを含めてあらゆる所が振動しますので、表板へのダウンスラストが減った事によって、左手の感覚に少なからず影響があるのは自然な事だと言えると思います。演奏家の感覚はセットアップの原点だと言う事ですね。
無伴奏の録音ともなれば、楽器にも大変なクオリティが要求されて当然だと思います。きっと楽器屋さんとの相談は、F1ドライバーが車のセットアップを追求していくようなものになるのではないかと想像しています。観戦したいです。

3台の楽器全てをハイサドルにして正解だったというのは、石川さんの感覚が正しかったのと同時に、よい楽器屋さんだったのではないでしょうか。機会があれば、是非その仕事を拝見したいです。

ところで、指板を削る理由は何でしょうか。反りが大きいという理由でしょうか。指板をパーツとして買うと、多くの場合は反りが大き過ぎるような気がします。もちろん、最終的な形より大きめに、あらかた成形してあるだけのパーツですが、標準とされている値が大きいのではないかと疑いたくなります。
指板に関しては、弦と直角方向のRも重要な要素だと思います。この辺についても、また教えて頂く機会を願っております。

いつも、ブログを読んで頂いてありがとうございます。力を頂いていますし、読んで頂いていると思えば、間違いを恐れずに書くこともできます。今後ともよろしくお願いします。