2010年11月2日

コンテムポラリー・イタリアン3

演奏する上では、今回のセットアップの最も大きな変更点は、指板の形とナットの弦間隔と言えるかもしれない。

ソロ用の楽器と言う事もあり、極力負荷を減らす方向の調整となった。指板については、キャンバーの量を僅かに減らし、断面方向のRを変更した。キャンバーは弦高とも関係して、少なすぎれば弦が指板に当たる原因になる。弦の種類にもよるが、かなり良い線ではないかと思う。
指板は、G線側のハイポジションが延長されたタイプで、延長部分は付け足したものではなく一枚だった。

断面方向のRは、駒の形によって決まる。駒の形は、弓で弾く時に隣の弦を弾かないようにするためのマージンをどの位取るかで決まる。駒の形から指板の形が決まると考えても良い。現実的には、標準的に必要なマージンは分かっているので、指板を削ってから、駒を作ることが多いが、今回は、駒を交換せず、移弦するときのマージンは今の状態が良いという事なので、駒に合わせて指板を削った。

ナット上の弦間隔は、簡単に言えば隣の弦との距離だから、低いポジションでのオクターブや5度を押さえる時に効いてくる。極端に狭くする例もあると聞くが、今回は標準的な範囲で少しずつ狭くした。弦の間隔は、間隔の値自体も大切であるし、間隔が均等である事も重要ではないかと思う。前者は色々好みや、コンセプトがあると思うが、後者については、不均等にした事が無いので、利点は分からない。ひょっとすると、何かあるかもしれない。
上が新しいナットである。仕上げればもう少し色は黒くなる。弦の間隔の差は、トータルで1.5mmほど狭くなった。技術の粋を極めるような演奏では、1.5mmは決して小さくないのではなかろうか。

2 件のコメント:

るいだ さんのコメント...

いつも楽しく拝見させて頂いております
m(__)m

技術の粋を極める…
どなたの楽器かなんとなく想像がつくような…気が致します。来年が楽しみかも!です。

yamaguchi さんのコメント...

るいだ さんコメントありがとうございます。るいださんの楽器もコンテムポラリー・イタリアンですし、日々技術の粋を極めていらっしゃるのではないでしょうか。もちろん、来年も楽しみです!

演奏のスタイルに反しない限り、肉体的な負荷を減らすという考え方は、師匠に教わった事で、大きな楽器だけに理にかなっていると思います。

音楽のジャンルや演奏のメソッドも様々ですし、当然演奏家の方の好みや体格、さらには楽器そのものも様々ですので、全てのケースがカスタムになってしまいます。その中で、答えを探すのは、楽しくもありますが、毎回いつも、悶々と悩んだ末に、ようやく解に辿りついているように思います。工房の近くを良く猫が通るのですが、悩んでいると、家人には、「1ニャン去って、また1ニャンか?」とシャレられます。

いつも読んでいただきありがとうございます。コメント、元気づけられます。