2010年6月30日

マジーニモデル2

表板は、しばらくそのまま置く事にした。
割れが無いので、ストレスを取り除いた状態で置く事により、自然に変形が戻るのを期待した。完全に元に戻らなくても、後の作業が楽になるはずである。

取りあえずは、あまり調子の良くないチューニングマシンから取りかかる。プラスネジが使われている。

チューニングマシンのウォームの軸部分は、曲がってしまっている事がある。ちょっと見ただけでは分からない位の曲がりではあるが、つまみの部分を、何かにぶつけたりした結果起こる事があり、調子が悪くなる原因の一つである。

このような場合には、軸を受ける部分がきつくなってしまう事が多い。軸をまっすぐに戻せればベストだが、曲がったものを元通りに伸ばすのは、なかなか難しい事が多い。材質がスチールであっても、鋳物だと、曲げ戻す時に折れる危険もある。曲がりの量も少ないので軸受の側で対応する事にした。

ただ今回のマシンは、素材や作りは悪くないものの、もともと軸受の側の精度に問題があり、軸に曲がりのない物もスムーズに回らなくなっていた。
軸の上からかぶさるパーツと受け側が面にならない。これは、削って形を合わせる。また、ネジを締める強さで軸の具合を加減するのか、完全にネジを締めた状態でクリアランスを持つようにするのか、もともとの製作意図があいまいな感じも受けた。

真鍮なので、削ること自体はそれほど大変ではないが、削る以上、一定の精度と見た目が必要だろう。面も新たにとる必要がある。削った所は、最初は光って目立つが、すぐになじむはずである。

チューニングマシンの調子を落とす原因は他にもあり、ペグ穴にニスが入り込んでいるのもまた一例である。楽器のニスは比較的やわらかく、筆者の考えでは、滑りが悪くなる原因である。今回もそれらのニスを取り除く作業を行った。また、ペグ軸の長さもチェックした。

仮組みして、状態を確認し、取りつけ直す。今回は少し光りめの仕上がりである。すぐに落ち着くとは思う。
ベースに使われていたネジはプラスで、しかもスチール製なので、躊躇なく変える事にした。もちろん真鍮のマイナスネジを使おう。
プレートとも良く合うように思う。機能的にはプラスのスチールネジでも何の問題もないが、マジーニをモデルとしている事でもあるし、必要な事に思えるのである。

2010年6月23日

THE SONG OF STRINGS

思いがけずCDを頂く事になり、丹羽肇(にわはじめ)さんのCDをご紹介します。丹羽さんは、福岡を拠点に全国で活躍されているジャズベーシストで、今回が初のリーダーアルバムだそうです。

THE SONG OF STRINGS
(SOSJ-0001)2,500円(税込)

お問い合せ:My walking life Bassplayer Hajime Niwa

2010年6月20日

マジーニモデル

どうも今一つ楽器が鳴らないということで、調整をご依頼いただいた。

指板と駒の位置関係があまり良くなく、その原因の一つが表板の陥没であることから、取りあえず、弦を外してテンションから解放した。陥没がE線側なので、中をチェックしたところ、バスバーが剥がれていた。
バスバーと表板は木目がほぼ平行な接着なので、一般にイメージされるよりは剥がれにくいと考えていいと思う。しかし、このように剥がれる場合もある。

バスバーは、一般には、駒からのダウンスラストに対抗するよう反りをつけ、テンションを付けた状態で接着される。反りの強さや形は、人によって様々なやり方があり、一様ではない。
表板が変形してしまったというのもあるが、かなりのテンションで貼り付けられていたバーのようなので、そのまま接着する訳にはいかない。接着面も清浄にできないし、強くクランプする事も出来ない。表板を開けて修理する。

バスバーが剥がれたため、弦からのテンションにより、表板が変形してしまった訳だ。どの位の期間そのままだったのか不明だが、よく持ちこたえたのではないだろうか。

2010年6月7日

black bass ふろく

他の弦楽器では考えられない事かも知れないが、時に釘が入っている事がある。


バロックヴァイオリンでネックの接合に釘が使われている、というレベルの話ではなく、表板や裏板を側板に止めるために打ったものである。

ただし、釘の数やサイズからみて、釘で持たせるつもりで打ったものではなく、恐らくは、接着の時の仮止めのためではないかと思う。表板を開けている時にナイフが止まると、やはり戸惑う。手ごたえが堅くても、ニカワの塊に当たっている事もあるので、どうもおかしいとなれば、磁石で探る事になる。


今回は2か所に打たれていた。パフリングにかけて見えにくいように打たれているので、無理に抜かずに、将来の大きな修理の時に抜くのが良いと判断した。