2011年3月5日

セルフネックのコントラバス 1

バスバーにはセルフバスバーがあり、ネックにはセルフネックがある。

現代の楽器では、一般的には、ネックの付け根付近にネックブロックがあり、ネックはネックブロックに接合される。

セルフネックと呼ばれるのは少し古風な手法で、ネックの部材自体が楽器の内部まで延長され、表板と裏板に直接接着されている。ネックブロックはなく、横板はネック材に掘られた溝に差し込まれて固定される。

ネック付近に問題があると、弦高に変化が現れることが多い。裏板のボタン部分が開き、弦高が高くなってきたとのことで修理を承った。150年ほど前のジャーマンということで、表題ではコントラバスと書くことにした。この楽器は、バスバーもセルフバスバーである。

ネックのヒールとボタン部分は以前に修理されたようで、ボタンはVの形に切られている。この部分が開いていた。ネック自体に折れた跡があるので、以前の修理でボタンが切られたのだろう。ネックが折れた場合、接着だけの修理では持たないので、何らかの補強が必要になる。補強を入れるために、ボタンを一度取り除き、補強を入れた後でボタンを戻したようである。

問題は、この楽器がセルフネックの楽器だったということである。ネックブロックのある楽器では、ブロックとネックの間の接着面積が大きいので、ネックの強度に対するボタンの寄与は相対的に小さい。セルフネックでは、ブロックが無い分、ボタンの役割は大きくなるように思う。ボタンを切ることが、問題が起きる可能性を高くしてしまったのかもしれない。

4 件のコメント:

教授 さんのコメント...

よしのずいから天井のぞく,という印象でしたが,現在の広角レンズだと視界良好ですね.ここからの風景はいつもながら面白いです.

yamaguchi さんのコメント...

教授さんコメントありがとうございます。
楽しいですよね。コントラバスは大きいので、ヴァイオリンに比べるとこういう写真は撮りやすいのではないかと思います。と言っても、私のカメラでは、とても全体は写りませんので、まさによしのずいです。補うために、鏡はもちろんですが、最近はスコープも使っています。

匿名 さんのコメント...

この楽器の持ち主です。
その節は大変お世話になりました。そちらのほうは火山灰の影響はなかったでしょうか。
お陰様で楽器は元気に鳴っております。
変な話ですが、持ち主でも内部は見れないので「こんな風になっているのか」と改めて写真をじっくり見てしまいました。
できれば今年も定期健診に出したいと思っておりますのでよろしくお願いします。
益々のご活躍を願っております。

yamaguchi さんのコメント...

匿名さんというか持ち主様、コメントありがとうございます。これから何回かに分けて、紹介させて頂きます。

楽器が元気とお知らせ頂きありがとうございます。ブログのためではなく、持ち主の方に説明するために、なるべく写真を撮るようにしています。ブログの写真は、いわばその副産物です。

確かに、エンドピンの穴からのぞくのは普段はできないことだと思います。中を照らすのにも多少の工夫が要ります。写真を少し説明しますと、表板には割れがあって、多くのパッチが貼られています。バスバーに沿った割れがあるので、バスバーと表板の入り隅には、補強のためにLの形のようなパッチが貼られています。基本的には、白いパッチほど新しいと考えていいと思いますが、中には、古いパッチを薄くするために削った結果白くなっているものもあります。

新しい楽器の内部は白木が綺麗ですが、古い楽器には積み重なった年月を感じられる良さがあります。修理を重ねて長く使ってこられたことが良くわかります。

火山のこと聞いて下さってありがとうございます。実は今日も降灰がありました。工房にはエアフィルターを付けているので、細かい灰が侵入したとしても作業にはほとんど影響ないのですが、農家の方は大変な被害のようです。