2011年3月17日

セルフネックのコントラバス2

楽器の寿命は、材料である木材の寿命に準ずると考えて良く、長い。ただ、全うするにはいろいろなことを乗り越える必要がある。

楽器として良い特徴をもったものならば、大切にされ長く使われる可能性が高いが、どれだけ大切に使っても、長い間には、必ず故障は起こる。故障は修理によって乗り越えられる。適切な修理のためには、可能な限り、修理がリバーシブルである必要がある。

この楽器は、150年の間修理を重ねて使われてきた訳だから、愛され、修理して使いたいというだけの魅力があると言える。
ボタンを開け、ネックの故障を調べるうち、合成系接着剤が使われていたことが分かった。コストなど何らかの事情ががあったのかもしれない。正確に何が使われたのかは分からないが、通常の手段で取り除くことは難しい。
また、接着剤の種類や接着の状態によるが、合成系接着剤には、クリープの問題がある。大きな力がかかると、少しずつ接着面がずれてしまい、場合によっては、ずれたまま固定されてしまう。

今回の修理の目的には、構造を元に戻すことはもちろん、可能な限り合成系接着剤を取り除くことも加わった。しかし、合成系接着剤は、かなり多くの部分に使われているため、全てを一度に取り除くためには、多額の費用がかかる。今回は、構造上主要な部分を手当てし、残った問題とは共存しつつ演奏可能な状態にするという道を選んだ。合成系接着剤であっても、現状の接着を利用できる部分もある。

楽器の寿命がある限り、これからも修理は行われる。この楽器の合成系接着剤を取り除くのは、手間はかかるが可能である。修理の度に、少しずつ問題個所を取り除き、少しずつ良い状態にしていくことができる。その価値がある。

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