2011年3月2日

アメリカから来たベース5

 表板の周囲は、夏目の部分が削れていて、楽器を拭く布が引っ掛かり、拭くと却って楽器を痛めてしまう状態だった。

正統に行うなら、エッジをつけ直すが、今回は別の方法で簡易的に補修した。簡易的といってもリバーシブルだから、後に本格的に直す時にも完全に元に戻る。

補修してリタッチしたら、楽器を布でふけるようになって気分が良い。
指板を変えて元のナットは低くなってしまったので、新しく製作した。指板を新しくする時、指板に余裕があれば、通常の厚みより厚い指板にすることもできる。この辺は、ネックの寸法や、プレーヤの好みによる。ただし、指板は重量があるから、あまりにも厚すぎるのも、楽器によっては合わないこともあるかもしれない。
試しに弾いてみて、やはりハイサドルを追加した。この楽器は、最初からハイサドルはつける可能性が高かったので、オーナーの方との話は問題なかった。
写真のように、テールピースの表から裏に向けて、テールガットの穴が開いているものは、テールピース自体の振動の自由度が高い。サドルと駒の頂点を結ぶ直線上から、テールピースの重心が離れるからである。良いとか悪いとかは、個々のケースによる。

テールピースは当初、汚れていてあまり良い状態ではなかった。弦の乗る枕もなくなっていて、さびしい。ただ、素材は黒檀で悪いものではなかったので、サンディングして塗装しなおした。色違いの唐木があったので、枕も作った。

楽器は、音量も出てバランスも良くなり、反応も軽くなった。と思う。以前のセットアップでは、楽器に対してテンションがかかりすぎ、無理があったのではないだろうか。

横板の手垢をクリーニングした所は、手で擦れた感じが良い雰囲気なので、周辺の色にリタッチせず、表面を保護するだけにした。雰囲気が良いからと言って、擦れたまま放置しているのは良くないのではないか。ニスの層が薄くなり、汗や水分の侵入を許せば、楽器を損なう可能性がある。
古い楽器でニスが擦れて無くなったような風合いをもつものも見られるが、多くの場合、目立たぬように保護のためのニスがかけられているようである。

2 件のコメント:

たぬき さんのコメント...

指板の黒檀材でネックの強度を保っている面もあるとのことなので、ある程度の厚みは必要かも。
特に強度の期待出来ない細いネックやネック自体薄いモノは指板の黒檀は厚めが必要なのかも。

yamaguchi さんのコメント...

たぬきさんコメントありがとうございます。
強度だけでなく弾きやすさにも影響する事を考えると、サイズに問題のあるネックの場合には、おっしゃる通り、指板で補う必要があるかもしれません。