2012年3月29日

Serrated Graft


何年か前に、Maestro Giovanni LucchiさんのSerrated graftを知った。これは、Maestro Giovanni Lucchiさんが開発した方法とのことである。

チップの近くのスティックが細くなった部分にクラックが入る事が有る。この部分は、強度に余裕が無い上に、しなったり振動しなくてはならないため修理が難しい。単なる接着や、 チップの先端だけが折れた場合のようなsplineを差し込む補強では足りない。

クラックを取り除いて別な木を移植するには、接着面が負荷に耐える必要がある。接着に強度を持たせるためには、できるだけ木端の接着になる方が良い。また、接着面積が大きいほど良い。例えば、Tip全体を新たに作り、斜めにそぎ落として接着する修理では、これら二つを満たし、かつ接着面をより有利な位置に移す事が出来る。

Maestroの方法は、簡単にいえばスカーフジョイントとフィンガージョイントを組み合わせたものと言える。スカーフジョイントもフィンガージョイントもメジャーな仕口だが、この二つを組み合わせて弓の修理に適用した所にオリジナリティがあるのではないか。 安い修理では無いので、弓は選ぶと思うが、一つの有効な選択肢ではないだろうか。 

割れた部分をそぎ取って、新しく移植する材料との接着面をフィンガージョイントでつなぐ。この補修でこの弓が今後どのくらい使えるのか、必ずしも保証はできないが、フィーリングの変化を最小限に抑え、とりあえずは使える状態になった。Maestroの情報なしにこの弓を修理する事は出来なかった。これらの情報を世に公開するMaestro Lucchiの姿勢に感謝し敬意を表したい。