2012年7月31日

弓のコンディション

楽器に比べ、弓は故障があっても無理に使われ続ける確率が高いような気がする。

故障によっては、気づきにくい事があるかもしれない。アンダースライドが外れていても、フロッグを弓から外すまで気づかない場合がある。アンダースライドが外れると、フロッグの黒檀部分の薄い所が徐々に割れて無くなってしまう可能性がある。フロッグ自体も徐々に変形してしまう。

このフロッグでは、アンダースライドはネジ止めされていたが、アンダースライドに皿が切って無かったため、ネジが素通りしていた。
アンダースライドは正確に貼り直す必要がある。不正確だと、アイレットの中心とスライドの中心がずれる可能性があるし、チップとの関係が崩れてしまう可能性がある。

アンダースライドをつけ直した。以前行われた修理の接着剤を取り除き、ネジ穴を埋め直した。ボタンがオリジナルではないようで、弓にも合っていないので、ボタンとアイレットは交換した。

このアンダースライドには、エッジに傷が残っている。アイレットの高さを調整するために、外したボタンのスクリューをを差し込んで回したためである。 これはやってはいけない行為に入る。特に良い弓ではやらない方がよい。アイレットの高さによっては、ネジ部分ががアンダースライドのエッジに触れて傷をつけてしまう。

良く分かる故障でも機能に直接影響を与えない場合、そのまま使われ続ける事がある。銀線のラッピングは、テープで固定されていた。ラッピングは、消耗部品なので、減ったら交換する。コントラバスのジャーマンボウの場合、銀線部分に指が触れて減る事はあまりないと思うけれども、ハンダが外れたり巻始めが抜けたりして緩む事はある。


銀線の巻幅はオリジナルの幅に合わせた。スティック上の痕からみると、銀線は緩んだだけでなく部分的に失われていたようだった。
ラッピングの下に、フロッグ削り合わせの時の合印が隠れている弓もある。
持ち主には防げない故障もある。フロッグのパールスライドの動きが固いと、毛替えの時に何かの工具を差し込まれてしまう可能性がある。差し込まれた結果、パールスライドが傷ついたり、フロッグの側に傷が残ったりする事がある。非常に見た目が悪くなってしまう。

長い間毛替えされていない弓や手入れの悪い弓で、パールスライドが非常に固い弓に出会う事がある。ここに工具を入れたくなるのは分かるが、しかしこれもやってはいけない事の一つではないだろうか。
直接は防げなくとも、アンダースライドパールスライドが適正な固さになっていれば良い訳だから、弓の状態を良く保つ事で、予防できるかもしれない。

2012年7月21日

Pianomania

Pianomaniaを見た。音に対する要求を伝えるのに使われていた言葉が興味深かった。

音色は奏者に寄る所が大きいとは言うものの、楽器の音ももちろんあるし、弾いた時の反応の差などの状態の差はもちろんある。車で言う所の「走り」はドライバーの物だけれども、車自体にも操作性や固有の特徴があるようなものか。

音色に対する要求を言葉にすると、抽象的な言葉になってしまう。しかし、それらを積み重ねて調整を進めるうち、成果は具体的な音として現れてくる。共通の理解に達した時に、「この音」としか言いようが無いものかもしれない。

コントラバスの調整の時も、映画ほど究極ではないけども、似たような言葉のやり取りがある。映画では、演奏家は音(や反応)に対する要望のみを語り、「ピアノのどこがどうだから、そこを少し削ってくれ」というような事は一切言わなかった。しまいには音だけでやり取りしていた。どうやってその音を実現するかは専門家である調律師に任された問題だからだと思うが、調律師に対する絶対的な信頼があると思う。

2012年7月5日

ニス


ニスは、汗などから楽器を保護している。
大抵のニスは水分で影響を受けないが、中には汗などの水滴が付くと表面に痕が残るものもある。何故か理由は分からないがそういう物もあった。湿度の高い日にニスが白化する事があるのと似たようなものだろうか。しかし、そのようなニスであっても、通常の使用状態であれば十分に保護の役割は果たすだろう。


一見ニスに見えるが 、実際はニス層が劣化していて、手あか等と混ざった物で置き換わっている事がある。そういう楽器で、修理やセットアップをしていると何となく手がペタペタしてきて、変だな?と思う。
G側の肩とか、Cバウツの横板など、手が良く当たる所で散見される。汚れを取り除いてから、補修した。