2014年6月12日

5弦にエクステンション?

5弦にエクステンションをつけたいとのご依頼であった。

詳しくお話を伺うと、ウィーン調弦の5弦にエクステンションをつけたいとのお話で、ウィーン調弦では第5弦をF~Dで調弦することが多く、エクステンションを追加することによって、Cまで出せるようにしたいという趣旨であった。

色々と相談させて(教えて)頂いた結果、半音三つ分で、半音ごとにカポ(ゲート)をつけることにし、かつ、Long-Eを使わず、普通の長さの弦を使うという仕様で製作させていただくことになった。

 半音三つ分は、F~Dで調弦した時の最低音の範囲と、通常の弦の長さの制約から決定していただいた。

すべての半音にカポをつけるというのは当方の提案で、運動性に劣るこのタイプのエクステンションでは、カポの助けが必須で、開放弦の音を簡単に変えられることがメリットであると説明させていただいた。
極力シンプルになさりたいとのご希望で、サムレストは省略し、本体の幅も細くした。

 Long-Eでなく、通常の弦を使いたいという強い要望を頂き、ペグの位置にはこだわらないと言っていただいたので、エクステンションのナットに最も近いペグにエクステンションの弦が入るようにした。通常の5弦で言うところのAに入れた。これも、できてみると、下4つのペグが通常の4弦と同じと見れば、一番遠いペグがエクステンション用の特別なペグと考えることができて、合理的な配置にも思えた。5弦であることが幸いしたのではないか。

もちろんこれだけでは、弦の長さは足りないので、テールピース側を少し加工して、”チューニング用のアジャスター”を使い、弦長を稼いでいる。それでも、弦の巻糸部分がナットにかかっている。今回使用した弦では、巻糸部分と通常使われる範囲の間は、金属巻ではあるものの、表面の研磨状態が荒くなっており、カポを減らしてしまう可能性があったので、表面を整える必要があった。

エクステンションのカポの位置は、計算した位置で経験上まず間違いない。弦長が長い側のせいか、実際と計算は非常によく合う。しかし、今回のように、いわば”無理な”弦の使い方をすると、計算から少しずれが生じるようだ。カポで閉じた音程はかなり正確に合うが、すべてのカポを解放した時の音には少しずれがあった。巻糸の影響が出ているのではないだろうか。実用上は耐える範囲のずれと判断し、弦のブランドにも依存すると思うため、一応今回は、ナット位置は計算上の位置とした。この辺は、少し使っていただいて、必要なら、ナットの音程を調整する。

今回エクステンションを製作し、テールピース側にはアジャスターを追加したが、音の面でも、問題ないようにセットアップできたと思う。