2014年7月14日

The Realistの可能性

以前、ピックアップのThe Realistには問題があることを書いた。

銅のフォイルに挟まれたピエゾの形に表板が凹んでしまう。修理は不可能ではないが、あまり現実的ではない。
加えて、ピエゾ部分の厚みは1㎜以上あるので、駒の足の表板へのフィットの程度が悪化する。ピックアップを入れる側(E線側)の足は当然悪化するうえ、片側の足だけ長くなったのと同じ状態なので、反対側の足も悪くなる。ピックアップを通さない状態の音に悪影響がある。

しかし一方で、The Realistはピックアップ自体の音には人気がある。アンプを通した時の音はピックアップによるところが大きく、このピックアップを好まれる方は多い。
一度でもThe Realistを入れてしまったら、表板は凹んでしまい、自然には元に戻らない。どのみち凹んでしまったなら、使い続ける選択肢も合理的と思う。ただ、その場合でも2番目の、ピックアップを通さない状態の音の問題は残るので、これを解決できないかと考えていた。

そのような楽器でも駒をThe Realistを前提にして作ることで、アンプを通さない音を相当程度改善できるケースがある。駒の足の長さをピックアップの厚みを計算に入れて作り、ピックアップ側の足を、ピックアップの凹凸に合わせてフィットする。ピックアップなしの駒との比較はしていないが、感触としては、ピックアップがあることのマイナスをほとんど感じない。既にThe Realistをお使いで、その音を愛する方には、一つの可能性となるように思う。

2014年7月7日

黒檀のミュート

黒檀のミュートを買ったら、そのまま使っていた。

商品を買ってそのまま使うのは、当たり前ではある。このようなものだと疑うことはなかったが、最近ミュートの製作をした時に、はたと気づいた。黒檀に限らず、木製のミュートは個々の楽器に合わせて調整して、初めて完成するのではないか。

コントラバスに限らないかもしれないが、駒の製作のコンセプトにはいろいろある。駒の先端の厚みも、いろいろで、1~2㎜の差は当たり前にある。たまたま上手く合う場合もあるかもしれないが、黒檀のような硬い木がでできたものが、すべての駒にフィットするとは考えにくい。

鑿や鉋のような道具は、買ってから自分で仕込むのが普通だ。「直ぐ使い」と謳われていても、少しは調整の余地が残してある場合が多い。使う人の好みや作業によって都合があるから、最初から仕上げてしまってあると逆に困る。

同じように黒檀のミュートも、「直ぐ使い」ではなく、もともとは楽器店で削ってもらって購入するものだったのかもしれない。自信があればDIYも良いと思うが、専門店で自分の駒に合うように削り合わせてもらう価値はあると思う。