2015年5月30日

ネックシム?

指板の接着状態が良くないので、ネックの反りが変化してしまうとのことであった。
指板は割合に簡単に剥がれた。接着には複数の種類の接着剤が使われ、接合面の隙間に充填するようなこともおこなわれていた。

ネックには既にシムが追加されていた。シムとネックの接着は良好に行われており、シムを残すことも考えられた。ただ、良く見るとシムというよりは、ネックの厚みの一部が置き換えられているような感じである。つまり、ペグボックスの一部も含んで新しい木に置き換えられている。

さらに良く見るとペグボックスとネックの木は別々に足されている。接合部分は正確に加工されている。
確かに力のかかり方からすると、ここが別になっていても、ある程度は許されるような気もする。それでも、力のかかる部分であるため、この部分の繊維はできるだけ多くつながっていてほしいように思う。

今回は、指板が薄くなっている分、ネックの厚みも増やしたいとのことだったので、シムの上にシムを追加すると二重になって、あまり見た目がよくない。綺麗にできてはいたが、 元のシムないしは埋め木を取り除き、新たに一体でシムを作ることにした。新たに増やした厚みはナットの下まで延長した。

ところで、チューニングマシンのための掘り込みには、スペーサーとして名刺が入れられていた。師匠の名刺ではないか。

ニスを塗り、指板を貼り直した。

2015年5月5日

弓のスクリュー

先の記事と似ているが事情は全く違っていて、この写真のケースは、直ぐに修理が必要な場合がある。

写真のように、スクリューの先側のねじ部分がアイレットの溝より先まで来ていることは、正常な状態ではない。スクリューがボタンから抜けてきている可能性がある。

このような現象は、スティック側の穴の深さがスクリューの全長と一致するように作られている弓では起こりにくいが、穴の深さをどうするかは、作者の意図もあると思うので、筆者がどうこう言う事はできない。

穴が深く掘られている弓では、スクリューがボタンから抜けると、ネジ山でスティックの穴を広げながら入って行ってしまう。穴がそれほど深くなければ、スクリューは穴の底に達した時点で止まるので、破損は少ない。このためスクリューが緩んでいる事が分からず、そのまま使い続けられることもある。穴が深ければ、時にスティックを内側から押し割ることもある。

ただ、写真のような状態でも、修理が必要でないケースもある。 専門家にご相談頂きたい。

ボタンスクリューが緩んでいない弓でも、スティック側の穴が深い弓については、状態に応じてあらかじめ防止策を講じることもある。穴の底を埋め木して、穴の深さとスクリューの長さを一致させる。万一の場合でもスティックが破損することを防げるし、ボタンが軽く回せるようになることもある。