2009年7月2日

C-extension (5)

真鍮パーツの加工を経て、カポの調整を行う。

弦への当たりや、開閉の状態などを見ながら、各音程ごとに形を合わせる。カポを閉じたときに、閉じた部分より上の弦がノイズを出さない事も重要だ。四角いカポは、何とも無骨だけれど、機能だけならこの状態でも使えない事はない。よほどの事情が無い限り、カポは片手で操作できた方が都合が良い。弦を指板側に押さえてからカポを閉める、というような余計なアクションが入らない方が、演奏者には都合が良いのではなかろうか。

カポの数に関して言うと、少なくともEのカポは有った方が良いのではないかと思うが、その他は、純粋に弾く方の好みではないかと思う。カポは開けてしまえば無いのと同じなので、半音ごとについていた方が、演奏が楽になるとは思う。しかし、オクターブの連続を弾くためにC#だけに追加したり、Dだけに付けたりといった選択肢もあり、自由である。カポを増やすと、その分の重量が増えるのでデメリットと言えない事もないが、機械式のエクステンションや、チューニングマシンの重さとの比較でいえば、ほとんど問題にならないレベルのように思う。

機能上の調整がすんだら、形を作ってゆく。カポは良く見えるし、直接手に当たる部分だけに、形もまた重要である。小さな世界だけども、例えば、面の処理などは、どこで始まり、どう繋がって、どこに消えていくのか、バリエーションは無限にある。オーナーの方の希望をお聞きして作業するが、ディティールをつくる楽しみを味わえるのは、作る者の特権かもしれない。

2 件のコメント:

るいだ さんのコメント...

美しい曲面ですね!
 最初の写真の四角いカポをみてから
整形された写真をみると尚更そう
思われます
 私は電気式も弾きますので、どちらかといえば多弦派なのですが、エクステも興味あるところです。
 面白いところでは、電気式の糸巻きにHipshotといいまして、糸巻き自体が
台座ごと回転して半音とかピッチを落とすシステムもあることを思い出しました(私も持ってました)
 ベースという楽器が低音の方に向かって音を増やしていくのはある意味自然の欲求なのかもしれませんね…
 乱文失礼します。趣旨に沿わない場合は削除していただいて構いません。

yamaguchi さんのコメント...

るいださんコメントありがとうございます。

楽器の造形には及ぶべくもないのですが、楽器に付ける部品ですから、できるだけの努力は必要なのではないかと思っています。新たな要素を付加するということでなく、可能な限り楽器がもともと持っている線を取り入れるというスタンスですが、非常に難しい課題で悩みは多いです。

Hipshot、なるほど、台座ごと回転するという仕掛けは面白いです。弦のテンションを下げるというやり方ですね。想像するに、テンションを下げ過ぎると弦が緩み過ぎてしまうので、半音という制約があるのでしょうか。しかし、半音といえども、効果絶大なシチュエーションがあると推察します。教えて頂いてありがとうございます。

Eのペグを交換するだけで済むと思えば、コントラバスへの応用も有りうる気がします。コントラバスの場合は、弦同士がテールピースで繋がっているので、他の弦のピッチがちょっとあがってしまうかもしれませんが、半音なら実用の範囲に収まるかも知れません。

低音への自然の欲求は、本当におっしゃるとおりですね。コントラ音域に限らず、本当に良く鳴る楽器に出会うと、解放弦を弾いているだけで気持ち良いものだと思います。電気式の場合には、弦が多くなっても弾きにくくなったりはしないのでしょうか。

趣旨に合わないなんてとんでもないです。コメント大歓迎ですので、これからもよろしくお願いします。