ハイサドルの機能は、表板へのダウンスラストを減らすことだ。
サドルの高さが高ければ、駒が表板を押さえつける力は減る。ハイサドルの働きは単純でも、どのような目的で導入するかは、その楽器による。表板の損傷を防ぐ、高音と低音の音量のバランスを調整する、楽器の反応を変える等があり、音も変わる。換言すれば、サドルを高くするだけでも、様々な要素に同時に影響を与えてしまうということである。良い方向にだけ変化するとは限らない。
今回の楽器に対しては、最終的に少し高めの設定にした。スチール弦からガット弦に変えただけで、弦のテンションは小さくなる。当初は、あまり高くする必要はないかもしれないと予想していた。結果は高めで良いようであった。後は、演奏される方のスタイルや好みによって調整するレベルと判断した。一般には、楽器にかかるテンションを低くすれば、楽器はよりフリーな感じになる。しかし、やりすぎれば音のフォーカスは甘くなる方向に変化する事が多いようだ。結局はバランスであり、どの位のテンションが良いのかは楽器や演奏スタイルによって判断する必要がある。
話は変わるが、エンドピンのシャンクは、今回の太いテールガット用に特注したものだということで、金属製の本体に黒檀が組み合わせてある。
2010年2月21日
ガットのテールガット
テールガット自体の強度に不安は無かったが、結束は細いガットを使うので、結束部分がもつのか疑問であった。オーナーの方の先生の情報も教えて頂き、結論としては、もつ、ということのようだ。ヴァイオリンで導入された事例では、結束部分はエンドピンのシャンク部分をまたぐように位置していた。今回は、シャンクとの関係で、途中に位置している。5弦のテンションを支えるのだから、不思議なものである。手は少し痛い。
2010年2月14日
テールピース
弦を通す部分は、鍵穴型でなく単なる穴とした。これもご希望に沿ったものである。すっきりとして良いのではないだろうか。ガット弦を使う事を想定しているので、穴は少し大きめで、其々の弦に合わせて穴の大きさを変えた。G線の穴がH線と同じだと、弦の結びめを大きくしなくてはならないためである。
テールガットを通す部分は、モダンのテールピースのようではなく、正面からテールガットが見えるタイプにした。これは、スタイルの問題もあるが、テールピースがよりフリーに振動するようなセットアップを念頭に置いているためである。写真のように、テールピースの裏側のテールガットが通る部分を高く削り残して、セットアップした時にテールピースが持ち上った状態にする。バロックのヴァイオリンのセットアップでも、このようなディティールを持つテールピースが使われたケースがあるようだ。
以前テールピースを上げる実験を行ってみて、場合によっては効果が見込める事は分かっていた。但しこれは、表板へのダウンスラストを減らす訳ではないので、ハイ・サドルの代用にはならない。テールピース自体の自由度を高める操作である。どの程度影響があるかは、楽器にもよると思う。今回は反応が重い楽器だったため、できるだけの事はやってみて損は無いのではないか。もし良くなければ、高くした部分を削って調整する。
テールピースのようなものでも、作るとなるとなかなか難しいものだ。ご希望の形は伺っていても、大きさをどうするかに始まり、細部の形は詰めなくてはならない。何度も図面を書き直しながら形を決めていく。型を作って、製作に入る。小さな材料であっても、木取りはいつも緊張する。木取りは、写真のように四角にするまでの話である。
2010年2月7日
重い魂柱
今回特徴的だった事の一つは、魂柱の材質が非常に重かった事である。材料はマツの一種のようではあったが、比重が大きく、ブナやメープルに近い値であった。魂柱が重いから、直ちに楽器の反応が重くなるとは言えないし、過去の試行錯誤の結果たどりついたのかもしれない。常に正解とは限らないけれども、今回は結果的には、魂柱と駒を変えて、反応の重さは改善された。
また、この楽器では駒の高さが高く、これはネックの角度の問題であった。5弦である上に、駒の高さが高く、テンションの低いガット弦に変える方向性に反しているように思われた。対策としては、ネックのリセットが最も王道かもしれない。もっと言えば、5弦のテンションに耐えるため、バスバーも強力なものに変えられているかもしれない。これらを変えるのは、比較的大がかりになるため、今回は、サドルを高くして、ダウンスラストをコントロールすることにした。
2010年2月1日
駒とピックアップと魂柱
今回の楽器の駒を新しく製作する事になった。
元の駒では、バスバーの位置に対して脚を適正に配置するには、筆者の感じでは少し小さいように思われた。
駒を製作する時、弦高をどのように配分するかはあらかじめ考えておく必要がある。指板のRを決める時に検討した内容を再度弦高の配分の立場で確認する。今回はアジャスターを希望されていたので、FishmanのFullcircleと単純に入れ替えられるように駒を製作した。アジャスターはアルミ製のシンプルなものを使用した。アジャスターは、左右同量回転させて使用するのが基本なので、位置が分かりやすいようにマークを入れた。
ピックアップはunderwoodで、駒のウイング部分の下に入れるタイプである。脚の方でなくウイングを削ってフィットするが、これも弦のテンションをかけた状態で行う事が推奨されているようである。実はこのピックアップの取り付けが、音に与える影響には興味があったので、何度か付け外しして試奏したところ、若干ミュートに似た効果が表れるようであった。アンプを使わない場合には、外した方がよりフリーな反応になるように感じた。筆者はピックアップに関してはあまり詳しくないので、メーカーの推奨に沿って、取り付けの精度を高めるよう努力するだけである。
今回は、元の魂柱が少し外寄りになっていて、標準的な位置に戻した方が良いと考え、魂柱の製作も行った。オリジナル(?)の魂柱は、細めなのが印象的で、一般には、細くすれば明るくなる傾向である。この楽器の場合はかなり細めだったので、明るい音色になるよう意図されたのかもしれない。新しく作る魂柱は、標準的なサイズにした。もし、これでダーク過ぎるという事であれば、細くできるからである。結果としては、オーナーの方のお好み次第という事になるが、筆者としては細くする必要は全く感じられなかった。
元の駒では、バスバーの位置に対して脚を適正に配置するには、筆者の感じでは少し小さいように思われた。
駒を製作する時、弦高をどのように配分するかはあらかじめ考えておく必要がある。指板のRを決める時に検討した内容を再度弦高の配分の立場で確認する。今回はアジャスターを希望されていたので、FishmanのFullcircleと単純に入れ替えられるように駒を製作した。アジャスターはアルミ製のシンプルなものを使用した。アジャスターは、左右同量回転させて使用するのが基本なので、位置が分かりやすいようにマークを入れた。
ピックアップはunderwoodで、駒のウイング部分の下に入れるタイプである。脚の方でなくウイングを削ってフィットするが、これも弦のテンションをかけた状態で行う事が推奨されているようである。実はこのピックアップの取り付けが、音に与える影響には興味があったので、何度か付け外しして試奏したところ、若干ミュートに似た効果が表れるようであった。アンプを使わない場合には、外した方がよりフリーな反応になるように感じた。筆者はピックアップに関してはあまり詳しくないので、メーカーの推奨に沿って、取り付けの精度を高めるよう努力するだけである。
今回は、元の魂柱が少し外寄りになっていて、標準的な位置に戻した方が良いと考え、魂柱の製作も行った。オリジナル(?)の魂柱は、細めなのが印象的で、一般には、細くすれば明るくなる傾向である。この楽器の場合はかなり細めだったので、明るい音色になるよう意図されたのかもしれない。新しく作る魂柱は、標準的なサイズにした。もし、これでダーク過ぎるという事であれば、細くできるからである。結果としては、オーナーの方のお好み次第という事になるが、筆者としては細くする必要は全く感じられなかった。
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