2010年2月14日

テールピース

オーナーの方のご希望で、テールピースを製作させて頂くことになった。

カーリーメープルで、あまり杢の深くないものを使った。一番細い所を少し細くしたかったためで、あまりにも杢が深いと強度が低下するかもしれない。

弦を通す部分は、鍵穴型でなく単なる穴とした。これもご希望に沿ったものである。すっきりとして良いのではないだろうか。ガット弦を使う事を想定しているので、穴は少し大きめで、其々の弦に合わせて穴の大きさを変えた。G線の穴がH線と同じだと、弦の結びめを大きくしなくてはならないためである。

テールガットを通す部分は、モダンのテールピースのようではなく、正面からテールガットが見えるタイプにした。これは、スタイルの問題もあるが、テールピースがよりフリーに振動するようなセットアップを念頭に置いているためである。写真のように、テールピースの裏側のテールガットが通る部分を高く削り残して、セットアップした時にテールピースが持ち上った状態にする。バロックのヴァイオリンのセットアップでも、このようなディティールを持つテールピースが使われたケースがあるようだ。

以前テールピースを上げる実験を行ってみて、場合によっては効果が見込める事は分かっていた。但しこれは、表板へのダウンスラストを減らす訳ではないので、ハイ・サドルの代用にはならない。テールピース自体の自由度を高める操作である。どの程度影響があるかは、楽器にもよると思う。今回は反応が重い楽器だったため、できるだけの事はやってみて損は無いのではないか。もし良くなければ、高くした部分を削って調整する。

テールピースのようなものでも、作るとなるとなかなか難しいものだ。ご希望の形は伺っていても、大きさをどうするかに始まり、細部の形は詰めなくてはならない。何度も図面を書き直しながら形を決めていく。型を作って、製作に入る。小さな材料であっても、木取りはいつも緊張する。木取りは、写真のように四角にするまでの話である。

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