2011年2月6日

プレーヤとセットアップ3 「指板」

弦高の話をしてきて、指板の話になった。

指板で演奏性に直結するのは、以下の2つが主ではないかと思う。指板のキャンバー(弦に平行な方向の反り)と、弦に直行方向のRである。これらは、一定の範囲内でプレーヤの好みにできる。ただ、後者は先に述べたボウイングクリアランスと弦高によって決まると言っても良いので、プレーヤとしては、キャンバーの値を中心に考えればよいのではないか。

指板の駒側の端の弦高が同じでも、キャンバーを深くすると、弦が指板に当たって雑音を出す確率が低くなる。一方で、弦高は高くなった感じになり、とくに、指板の長さの中央付近の弦高が高くなる。

キャンバーを小さくすると、この逆が起こる。もちろん弾き方にもよるが、弦が指板に当たって雑音を出す確率は高くなり、全体に弦高は下がる感触になる。キャンバーを小さくしすぎると、押さえている指よりナット側の弦が共振してノイズを出す場合もある。(これはナット側の弦高も関係がある。)

指板のキャンバーは、全長に渡って均一な曲率が基本である。何らかの都合で、正確な円弧にしない場合でも、少なくとも曲率の変化がゆるやかでなくてはならないのではないか。使用に伴って部分的に凹んだ指板の修正を行うとき、指板の一部だけを削って修正できることは少ない。凹んだ部分を平らにするには、それ以外を削る必要があるからである。

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弦に直行方向のRは、希望する弦の配置と希望する弦高から決まる値でなくてはならない。弦の配置は、望むボウイングクリアランスから決まる。
プレーヤの立場から注文するならば、弦高のところで書いたように、ボウイングクリアランスを大きくしたいのか、小さくしたいのかを言うことになるのではないか。

弓で弾かないギターのような弦楽器には、指板にRが無い。このことから考えると、pizzのみのスタイルのプレーヤには、ボウイングクリアランスは少ないほうが弾きやすいかもしれない。好みによる。しかし、よほどのことが無ければ、一応は弓でも弾ける範囲内で少なめにセットアップするのが良いのではないだろうか。

5弦の楽器の場合は、もともと許される調整の範囲が狭い。楽器が大きくなる上に、弦が増えるから、必要なボウイングクリアランスを得る事自体チャレンジになることもある。

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チェロやヴィオラにもあるように、E線の下だけ平らになった指板の効用はどうだろうか。モダンの弦を使う上においては、この"beveled"指板は殆どの場合必要ないと考えてよいのではないか。厚みが十分残っていれば、丸い指板に削りなおすこともある。これはプレーヤの好みや使う弦と演奏のスタイルによる。

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