2011年5月10日

東欧から日本にいらしたの?2

弦のテンションが無くなると、隙間があいてくるナットがある。

ナットは、たいていの場合は接着してある。あくまで個人的な認識であることをお断りしたいが、ナットは接着されていなくても音の上ではあまり問題にはならない。楽器の使用上は、弦を緩めた時などにずれると面倒なので、接着してある方が実用的である。ただ、接着の有無にかかわらず、ナットが収まるべき場所に密着していることは重要ではないかと思う。

このような事を書いていると、重箱の隅をつつくような事を言うようで、ちょっと気がひける。しかし、テンションがかかっている時に隙間が無くて、テンションが無いと隙間が開くという事は、その分だけバネが入っている訳で、その量によっては、音に影響している可能性がある。本当に影響しているかどうかは、定性的に判断できないかもしれない。通常は一度に全ての弦を外す事は無いので分かりにくいのではないか。一度に弦を外すと、魂柱が倒れたりセットアップを元に戻せなくなるリスクがある。

さらに細かい事を言うようだが、この楽器のナットはなぜか小さめであった。もともとこうなのか、何かの事情があったのかは分からない。

ちょっとくらい隙間があっても、ちょっとくらい小さくてももちろん良い人には良いと思う。法に触れるわけではないし、第一、楽器の世界にはいろいろな自由があるはずだ。しかし、だからこそ、チマチマ細かい事を言って、隙間をなくしたりサイズを合わせる自由だってある。

2011年5月1日

東欧から日本にいらしたの?

 もし楽器の中に何か書いてあったら、一応持ち主の方にお知らせする。

自分の楽器の中に、何か書いてあったら知りたいと思う。時代のある楽器なら、昔に想いを馳せることもできるし、自分が楽器をあずかって来た中の一人で、次の人に引き継いでいくという事も実感できる。

表板の裏側に書いてあるときには、鏡に映す事になるので、読みにくい。写真に撮って反転するまでは、アルファベットでは無いような気もした。

内容がどこまで正確なのかは、鑑定家によるしかない。私は鑑定には素人だから、持ち主の方には書いてあったことを伝えるだけだ。ただ、名のある楽器でなければ、敢えて嘘を書く理由もないとも思う。仮にこの記入自体がオリジナルでなかったとしても、ラベルが痛んだ等の理由で、内容が書き写されたかもしれない。

チューニングマシンから始めた。このマシンには、大きな故障は無かった。左がクリーニング後である。使い込んだ感じが残った方が良いと思う一方、汚れが残っていると、汚れの下がさびていても分からないので、汚れの部分は落とした方が良いと思う。汚れと味の境目はどこなのかが難しいが、機械として正常に動作するために必要な事はやるようにする。歯車の歯の間には、オイルやワックスとホコリの混ざった物が詰まり、ウォームとの摩擦を大きくしたり、かみ合わせを悪くしたりする。この詰まった汚れは思いの外固い事が多い。

チューニングマシンがオリジナルかどうかは(私には断定できないけれども)、ネジ穴やスクロールへの彫りこみが現状のものと一致していれば、オリジナルの可能性は高くなる。ネックから先全てが交換されていれば別だが、マシンだけをつけ直すには、ネジ穴を埋めなおしたり、ブッシングしなければならないので、跡が残る。この楽器にはそのような跡は無かった。