2011年6月27日

東欧から日本にいらしたの?5

古い駒の足の跡には、緑っぽい粉がついていた。

チョークフィットされたのか、または、他の目的があったのかは分からない。世の中では、駒と表板の間に何かを挟んでみるという実験も行われているようなので、これだけから何かを特定することは出来なかった。映画やドラマの刑事は、白い粉を見つけたら、舐めて物質を特定するようだが、そんな危険なことは出来ない。ともかく、この粉は拭きとり、新しい駒を製作した。

 小さめだったナットも、大きさを合わせて製作する。製作なのか制作なのか、今では特にこだわりは無いが、ナットのような単純なパーツでも、機能上いくつか押さえなくてはならない事があり、その辺はこだわっても良いと思う。
ナットのスタイルに関しては、基本的に元のナットを踏襲する。
チューニングマシンのネジは、真鍮製を使用した。本来ならスチールが望ましいのかもしれないが、自分のコレクションには、まとまった数の同じネジが無く、真鍮製のものを使用した。真鍮の表面が酸化してくればなじむと思う。ネジ穴のうち、下穴が大きいものは埋めなおした。

セットアップを終えてみると、反応が良く、かなり明るい傾向になったと思う。特段明るくする方向に調整したわけではなく、たいていの楽器は、問題を取り除いていくと以前より明るく感じる。また、いったんテンションを解放すると、弦を張ったすぐ後は明るく聞こえる事もある。特に、今回は弦もシンセティックコアの弦で、その分派手さが加わっている。

東欧からいらして、しばらくは日本に滞在し、持ち主の方に大切にしてもらえると思う。いつかまた旅する時がきたら、今度はどの国に行くのだろうか。

2011年6月19日

東欧から日本にいらしたの?4

一見ニスが残っているように見えて、実はニスが無いことがある。

手擦れしてニスのような光沢があっても、ニスが無ければ表面から汗を吸いこんでしまう。手でよく触る部分がそうなっていることが多い。この楽器の肩もそうで、クリーニングすると白く木の地肌が出てきた。元の風合いを残すようニスをかける。


 駒や魂柱をセットアップして試奏した結果、ハイサドルにする。サドルを外すと、サドルは以前に外した時に割れたようである。ハイサドルにするので、このサドルは、オーナーの方にお渡しする。表板のノッチも綺麗にする。前に表板を開けた時のピンがかなり際にある。ノッチの奥行きは比較的小さめである。
サドルをとると表板の年輪が良く分かる。ブロックがどのように木取りされているのかも見える。また、横板の厚みがどの位なのかも見ることができる。もっとも横板は、全ての場所で同じとは限らない。


ハイサドルは、少し高めに作って、試しながら下げる。黒檀を少し大きめに木取りする必要はあるが、逆はできないからである。弾いてみて、少し低くした。ハイサドルの形は、いろいろやってきているが、機能としての構造は変わっていない。

2011年6月13日

東欧から日本にいらしたの?3

 コントラバスのチューニングマシンはスクロールチークにネジ止めるされる。

ネジの長さが長すぎれば貫通する。弦のテンションは、チューニングマシンをとめるネジが受けるわけだから、可能な限り大きめで、長めのネジを使いたくなるのは、心情としては理解できるが、貫通はよろしくない。
このネジ部分のトラブルは散見するが、経年変化によるものよりは、取り付け時の不手際によるものが多いような気がする。

例によって、プラスネジが気になるけども、材質がステンレスであることの方が違和感があるかもしれない。この辺の趣味は人によると思う。このチューニングマシンなら、材質がスチールのマイナスが良く合うように思うが、本体と同じくらいの時代があれば、プラスネジでも納まる気がする。

スチールのマイナスネジも集める事にしよう。古い家具や、建具などからサルベージできる。時に、古い道具箱から、箱で見つかることもある。
以前、金物屋が間違って、金物の取り付け用にマイナスネジをつけてくれたことがあった。喜び勇んで店に行くと、丁寧に間違いを詫びられた。そうではなくて買いたいと言うと、探してくれたが、もう無いとの事であった。