2012年10月30日

Hearing Protection

世の中すべての人にとって職業上注意すべき安全の一つに、聴覚の保護がある。

大きな音に対しては、耳栓やイヤーマフを使用して、聴覚を守る必要がある。面倒ではあるが、繰り返し大きな音にさらされると聴覚は自覚のないまま少しずつ損なわれるということなので、気をつける必要がある。

この事は知識として知っていても、現実にはよほど強い意志が無ければ実行は難しい。勤めている人なら職場の環境もあるだけになおさらだ。筆者ももっと早くから実行できれば良かったと後悔する事がある。

オーケストラプレーヤーにも同じ問題があるという事は知られてはいるが、どの程度重視されているのだろうか。恥ずかしながら、筆者自身問題を知りつつもどこか他人ごとであった。しかし、楽器の音はかなり大きい音に分類される。ただ、音楽家の場合には耳栓が演奏の邪魔になる可能性があるために、単なる遮音だけでは完全な解決は難しいのではないか。

音量が危険なレベルに達すると、音を遮断する耳栓がある。これが本当に良い製品かどうかは分からないが、危険の無い時にはマイクで音が内部に伝えられるので、単なる耳栓のように常にゲインがあるものより実用性があるかもしれない。
価格はそれなりだが、実用になるなら決して高い買い物では無いと思う。 もちろんもっと安価で単純なタイプの音楽家向け耳栓も多数世の中には存在している。

ETIMOTIC MusicPRO Electronic Musician's Earplugs
http://www.etymotic.com/hp/mp915.html

実は、木工用や射撃用のイヤーマフにも同様の機能をもったものがある。通常は会話が自由にできるが、騒音が危険なレベルになると音を遮断する。同じような機能のイヤーマフを知っていながら、今まで音楽家用の製品に思い至らなかったのが残念だ。

 大きな音で聴覚は損なわれる可能性がある。一度損なわれた聴覚神経(正確な言い方で無いかもしれない)は再生しない。新陳代謝しない細胞のようだ。

どの位大きな音に耐えられるかには大まかな目安がある。色々な基準があると思うが私の見た資料では以下のようだ。
  • 90デシベル 一日8時間まで (芝刈り機、電動工具)
  • 100デシベル 一日2時間まで (チェーンソー)
  • 115デシベル 一日15分まで (車のクラクション)
  • 140デシベル 短時間で聴覚に障害を及ぼす (ジェットエンジン)
もう少し厳しいものでは
  • 85デシベル  8時間まで
  • 97デシベル 2時間まで
  • 100デシベル 15分まで
  • 103デシベル 7.5分まで
筆者は専門家ではないし、この分野にとくに詳しいという訳でもないので、以下の資料にはいくつかの参考になる数値がある。資料の正確性は不明だが、仮にこれらの値が完全に正確でなくても、内容はごくごく常識的な話なので、問題はないと思う。

Noise and Hearing Loss in Musicians
https://circle.ubc.ca/bitstream/handle/2429/816/MusiciansFinalRevised.pdf?sequence=1

オーケストラのピークでは120~137デシベルに達するようだ。

写真の筆者のイヤーマフは木工用としては一般的なもので、29デシベルのゲインがある。先の製品はモードに寄るが15デシベルある。15~20デシベルという値は、ざっと調べた感じでは、音楽用の耳栓としては相場的なゲインのようだ。ゲインが大きすぎると演奏に支障があるのではないか。綿やティッシュを耳に詰め込んで得られるゲインは7デシベル位のようだ。得られるゲインは音の周波数にも依存するので、それらが考慮されていない綿やティッシュはお勧めできないようである。

上記の資料中には楽器ごとの代表的な音量のレベルの表もあって、予想に違わずコントラバスの音量は、他の楽器に比べて低いレベルだった。耳には優しい。

Violin 84-103
Cello 84-92
String Bass 75-83


2012年10月16日

dot

指板上のポジションマークが大きすぎるのでつけ直したいとのご依頼であった。
セットアップを行ううち、マークの位置も指板のセンターでない事に気付いた。

以前のマークは多分box woodで、径は6mm強だったから1/4インチではないかと思う。以前のマークを掘りだし、黒檀で一度埋めてから貝で入れた。写真では、マークはすでに新しく入れ直してある。

マークを入れる時は、弦長が確定してからでないと位置を決められないので、事前にセットアップを決める事が必要と思う。計算で出した位置を参考にしつつ、慎重に位置決めした。


最初にご希望を伺った時は、径が小さすぎる様に思えたが、実際入れてみると良く見えて、まだ小さくしても良いかと思える位であった。良いセンスだなあと感心した。