2007年3月30日

弦高の変動など5

木材の伸縮など、色々考える事は面白いけれども少し実際的な事も書かなければ、ただの妄想で終わってしまいそうだ。

実際には、湿度が高くなると弦高が高くなることが多いようだ。そして、魂柱は緩くなる。魂柱の長さは湿度では変化しないから、楽器の内寸が大きくなると言う理解で良いと思う。だから、湿度が高くなった時に、弦高を調節しようとして駒を外すと、魂柱を倒す危険が高い。

2007年3月29日

シェラックなど1


シェラックとは、ラックカイガラムシの分泌液を精製した樹脂で、アルコール溶解性であり、楽器のニスにも使われる場合がある。シェラックは、写真のフレーク状のものをアルコールに溶解して使う。

家具には単体で使用するが、シェラックは硬いので、楽器のニスには他の比較的柔らかい樹脂と混ぜて使われるようだ。硬すぎるのである。シェラックが全く含まれないレシピも有る。ニスのレシピの話は、筆者の能力を超えるとても大きなテーマなので、レシピの話ではなく、ちょっとした事を書く事にする。

例えば、楽器全体でなく部分的な補修のことを考える。コントラバスの場合、下にして置く側のエッジが痛みやすいので、ここをタッチアップする時にシェラック単体、あるいはシェラックの比率を高くするというのはどうだろう。全体を硬いシェラックで覆うのは良くないにしても、エッジ部分を保護するだけなら、音への影響も避けられると思う。

2007年3月27日

テールガットなど


テールガットの素材には、針金状のもの、ワイヤ、新素材のヒモ状のもの、ナイロン製のもの等が有る。

針金状のものは最も剛性が高く、一般的にはあまり良くないそうだが、楽器によってはフィットするものもあるかもしれない。楽器はそれぞれ違って、一般的なルールから外れたセットアップがその楽器には最適ということがあるからだ。端部にネジの切ってあるナイロン製のものは、触った事が無いのでここでは触れない。

一般に剛性が高いと良くないというのは、テールピースも自由に振動できた方が良いからのようだ。その点、新素材のヒモ状のものは、柔軟性では最も優れていそうだ。ヒモ状テールガットでは、長さの微調整は結び目を解いて結びなおす事で行う。しかし、手で結ぶ力は、弦の張力(100kg以上?)にははるか及ばないので、弦を張ると結び目が締まる分伸びてしまう。最終的に落ちつく長さを予測して結ばなければならない。 テールピースのピッチを調整する場合には、これがなかなか根気のいる作業だ。

ステンレスワイヤは柔軟性ではヒモに1歩譲るが、テールガットの長さ調整は圧倒的にやりやすい。筆者は写真のようなスリーブを使うが、他にもワイヤを固定する金具はいくつかあると思う。ワイヤーの太さが2.5mm程度のものを使っている。細い方が柔軟性が高いが、強度が落ちる。太すぎると強度は高いが柔軟性が無くなる。ワイヤーの端は熱収縮チューブで処理している。

2007年3月26日

魂柱など2の訂正

「魂柱など2」で、魂柱の一般的なサイズ(直径)を16~19mmとしていたが、これは間違いで19~22mm位が正しい。
16mmは魂柱としてはかなり細く、場合によっては表板に損傷を与える恐れがある。ただしこれもケースバイケースで、楽器の音がダークで他に仕方が無い時には、このような細い魂柱が用いられるケースもあるという。

ちなみに、魂柱の径が細くなれば音色は明るくなるようだ。
魂柱の材質が硬くても(年輪の密度が高くなれば)音色は明るくなるらしい。

魂柱など2

魂柱の一般的なサイズは16~19mm19~22mm位で、貼られる弦の張力にも寄ると思うが、あまり細いものは表板に損傷を与える恐れがある。

素材は一般には松やスプルースの類で、木目が通直で年輪が詰まっている方が良いという。針葉樹の場合年輪の色の濃い部分は冬目だから、年輪の間が狭い材料は密度が高く、強度のある材料ということになる。この年輪が表板の木目と直交するように楽器の中で立てられる。

では、合板の楽器の場合はどうなのか?「どんな楽器でも、正しくセットアップされていれば、(その性能の範囲で)楽しく弾ける。」という観点から合板の楽器についても考える価値はあると思う。

合板の楽器の場合は、魂柱の材質をハードウッド(広葉樹)のものに変えると良い場合があるらしい。実際の経験が無いので、断定的に言う事はできないが、確かに、合板の場合は密度も違うし、振動に対する抵抗も無垢の素材とは異なるため、最適な魂柱の素材も、針葉樹では無いかもしれない。
ハードウッドの例としては、ビーチ(ブナ)やメープル(カエデ)などが候補にあがる思う。

2007年3月25日

糸倉の中で


弦を張るとき、糸巻きに他の弦が干渉する事がある。
本来は弦とペグが干渉しないような位置に、ペグ穴があいてないといけないのだろうが、オリジナルのペグが着いているとは限らないし、もともと3弦だった楽器などは糸倉も小さいので、スペースに余裕がないのかも知れない。

ともかく、ペグに干渉するだけならまだしも、弦同士が干渉すると他の弦の調弦まで変わってしまう。これをなるべく回避したい。さらに、ナットからの角度がなるべく緩くなるようにしたい。あまり急な角度がつくと弦に良くないだけでなく、チューニングもしにくくなる。

そこで、写真の様な配置に巻く事が多いのではなかろうか。読むのも億劫かもしれないが一応説明すると、

・E線のペグは、他と干渉することはあまりない。
・A線はD線の通り道を右側(以下左右は上記写真での話)に確保しつつ、巻き終わりがなるべく左に寄るようにする。
・G線は左に寄せたA線の近くから右に向かって巻き始め、最後の一巻を間隔を空けて巻き、D線の通り道を作る。
・D線は、左から巻いてA線の右側を通り、G線の通り道を通る。

G線とD線が交差するところが今1つ綺麗でないけども、弦同士が擦れあうのは避けられる。もっと良い巻き方があるかもしれない。弦の巻き始めを穴に長く差込んで巻き数を減らすのは、弦への負荷とチューニングの安定性からあまり推奨されないようだ。

2007年3月24日

弦高の変動など4

「弦高の変動など3」までの考えをまとめると、

湿度が高くなると、
・表板は、弦高が高くなるように
・側板は、弦高が低くなるように
・裏板は、弦高が低くなるように
それぞれ動くと思われた。

弦高が高くなる方と低くなる方の両方の要素があるので、湿度が高くなると弦高は高くなるのか低くなるのかは分からない。それにこれらの話は実験で確かめていないから、あくまで机上の話(しかも定性的な)でしかない。湿度が高くなると本当に楽器のアーチが高くなるのか、測定してみなければ分からないことだ。それに、実際の条件はもっと複雑だ。これまでの話では、表板や裏板の外周は側板によって固定されていると仮定してきたが、側板自体薄いので実際は変形しているかもしれない。表板と裏板は材質も違うし、何といっても表板にはf穴という穴が空いている。

しかし、楽器が無垢の木で製作されているのは事実だ。無垢の木で製作されている以上、材料の伸縮を吸収する仕組みが必ず必要だ(と思う)。もし、楽器のアーチがその役目を果たしているとすれば、驚く事だし、とても優れたデザインと言えると思う。しかも、弦高に対しては、互いに相殺するような機能があって、湿度の変化に対して弦高を一定に保つ働きをしているのではなかろうかと想像するのは、飛躍が過ぎるだろうか?

2007年3月23日

またまたまたアジャスターなど


駒の高さを変えるアジャスターでは、注意する事がある。
以下では、アジャスターの円盤部分より上を脚側、下を足側と呼んでいる。

アジャスターの下面は駒の足側に付いてはいけない。つまり、アジャスターを駒の足に完全にねじこまず、少し隙間が開いている方が良いようだ。駒の足側(アジャスターの下側)には、アジャスターを受けるネジが切ってあり、アジャスターのネジが入っている。音の面からいくと、アジャスターと足はネジ部分でのみつながっている状態が好ましい。らしい。

一方、アジャスターの上側の面と駒の脚が接する部分は密着していなくてはならない。また、脚内部にはアジャスター上部のピンが刺さっているが、このピンの穴がピンと干渉してはいけない。ガバガバでは困るけど、きつくてはいけないという事だ。筆者の解釈では、脚とアジャスター上部の密着度が大切で、ピンは位置決めの役目をしているだけだ。

また、アジャスターを付けると駒のフレキシビリティが上がるので、駒の反りへの対応が柔軟になるけれども、アジャスターのネジ部分にも負荷がかかるので駒の反りをこまめにチェックした方が良いようだ。アジャスターのネジを受ける部分(メネジ)は、多くの場合木質のままなので、アジャスターを回す時など、少し弦を緩めて負荷を減らした方が安全と思う。

2007年3月22日

テールピースなど1

テールピースの素材や種類が各種あって、替えると音が変化するというのは良く知られていると思う。しかし、セットアップした後、テールピースのピッチ(タップトーンという方が正確か)の扱いについては、あまり知られていないのではなかろうか。

ピッチに関することでは、(テールピースの)ナット部分が可動になっていて、テールピースと駒の間の弦のピッチを調整できるものがあるし、また、この部分の弦のピッチが特定のピッチになるように間隔を調整するという話も聞いたことがある。弦長の1/6という値も目にした。 この部分に重りをつけて、ウルフトーンを軽減しようというのがウルフキラー。ウルフのピッチは楽器によって違うが、 ウルフキラーをスライドさせる事で共振ピッチを変えられるので、多くの場合は対応できる。

テールピース全体も(巾はあるが)共振するピッチを持っている。これが冒頭に書いた、テールピースのピッチの事だ。テールピースを弓で弾いた事がある方は良く分かると思う。脂がつくけど。テールピースの素材や種類を替えると音が変化するというのは、このピッチが変化する事にも原因がある。

2007年3月21日

クランプなど


表板や裏板を接着する場合にはエッジクランプを使うのが便利だ。

比較的簡単に自作できるし(買った方が安い?)、曲線のエッジを圧締するにはとても良い道具だと感心する。コントラバスは形やサイズが各種あるので、ヴァイオリンのような定型のクランプにならない所が残念だが、いずれにしても一挙に接着できるわけではないので、残念とは言えないかも知れない。
コントラバスの大きさゆえ、汎用のクランプが登場する場面もあるが、汎用のクランプは締める力が強いので、使う場所と締め加減に注意しなくてはならない。コントラバスの側板の厚みは薄いので、締めすぎると楽器を壊してしまう。

2007年3月20日

弦高の変動など3

表板や裏板の「たわみ」が「弦高が湿度で変化する」ことに影響を与えている仮定して、どのように影響を与えていると考えられるだろうか。
表板、側板、裏板に分けてそれぞれの伸縮に伴う動きを考えてみる。

表板は、側板という枠に周囲を接着されているので、湿度が高くなって巾が広がった場合、アーチの方向にたわんで(ふくらんで)来るように思われる。これは駒を押し上げる方向なので、弦高が高くなるように作用すると思う。

側板の巾方向(木繊維に直行する方向)は、動きに制約を受けないので、湿度が高くなると単に巾が増えるだけだ。つまり楽器の厚みが増す。楽器の厚みが増えると、相対的に魂柱が短くなってしまう。魂柱には表板を支える役目も有るから、支えが短いと弦からの圧力で表板は沈み、弦高は低くなるように作用すると考えられる。

アーチのある裏板の場合、湿度が高くなると表板同様アーチの方向にたわむ(ふくらむ)ように思われる。アーチの方向が表板と反対側であるから、魂柱が緩む方向にたわむ。ということは、側板と同様の効果で表板は沈み、弦高は低くなる方向に作用しそうだ。

ではフラットバックの場合はどうか。実はフラットバックの場合もアーチのある裏板と動く方向は同様になる。フラットバックは内側にクロスバーが接着してあって、内側の伸縮を止めている。しかし湿度が高くなると裏板の巾は広がろうとするから、内側より外側の方が長さが伸びるように反る。すなわちアーチのある裏板と同様に、湿度が高くなると、弦高は低くなる方向にたわむように思われる。

2007年3月19日

また上ナットなど


上ナットの弦間隔は弾いている分には意識しにくいポイントかもしれない。
間隔が一定で可能な範囲で狭くした方が良いようだ。弦の間隔に配慮されたナットで弾くと演奏しやすいように思う。間隔を狭くすることは、不思議なようだが、楽器の鳴りにも影響するという。

ナットの弦間隔は弦のセンター間で測る。ナット製作の時には、最初にマークしてから丸ヤスリで弦の通る溝をつける。丸ヤスリは切削の方向性が無いので、常に測りながら作業しないと最初にマークした位置からずれてしまう事がある。また溝の深さでナット側の弦高が決まるので、弦をのせながら作業を進めるのがやりやすいかもしれない。写真のナットは製作途中で端部の成形などはまだされていない。

2007年3月18日

楽器の足(?)など

コントラバスは側面を下にして置かれる事が多いので、表板や裏板のエッジが痛みやすい。
これを防止するために、床に当る部分に黒檀等で「足」がつけてある場合がある。

足がついているとエッジが痛みにくいが、足の大きさが小さいと、置いた時に重さが局所的にかかることになるのがちょっと気になる。この辺は、エッジの保護と側板への負荷とのトレードオフになる。黒檀などの硬い材質でなく、ある程度の面積がある厚手の革を貼って足にする方が負荷は小さいという。革の場合は見た目が良いといえるかどうか。外観も重要。

2007年3月17日

魂柱など1


魂柱の調整は、高度に訓練された専門家の経験と勘が物を言う・・・とは思う。
しかし一方で、そこまで高度なレベルで無くとも、一定のレベルまではコントロールが可能だ。駒に対する位置を記録し、カルテを作るのだ。記録があれば位置の再現もできるし、 調整を追い込んで行くこともやりやすくなる。
特にコントラバスの場合は楽器が大きいので測りやすい(と思う)。魂柱用のゲージをf穴から差込んで駒からの位置を測定する。魂柱の位置は駒との相対位置なので、勿論駒の位置も記録する。写真は測定の一場面を撮ったもの。黒い物がゲージで、ゲージの左端が魂柱の駒側の端の位置を表している。
この測定もそうだが、f穴を介した作業では、f穴を傷付けないよう注意を払う必要がある。f穴を介した作業は頻度が高いので、「わずかな傷」でも簡単に蓄積してしまう。

2007年3月16日

またまたアジャスターなど


アジャスターの材質には、真鍮、アルミ、黒檀等がある。手元に無いので黒檀のアジャスターの重さは分からないが、真鍮のものは35g前後、アルミのものはその半分くらいの重さがある。実際にはペアで使うので、総重量は倍だ。黒檀製のミュートの重さは60g位であることを考えればかなりの重量だ。 つける位置が違うので一緒には出来ないと思うが。
実際、真鍮製のアジャスターを付けたからと言って、ミュートを付けた時の音になるわけではない。好ましい音色に変化する事だってある。ただ、セットアップの方向を全体として一致させる様にするためには、アジャスターの重量も考えに入れた方が良いのではなかろうか。重く太い弦を張って重厚な方向にするのか、細く軽い弦で反応を良くしたいのか、そういう方向性と。
写真は真鍮製のアジャスター。真鍮製は重いが見た目の高級感があり、外観上は楽器の付属品として最もフィットしているのも悩ましいところだ。

2007年3月15日

エンドピンなど

エンドピンのゴムは消耗品として考えられていないのだろうか?
たいていの場合、純正品(?)のゴムだけを気軽に買うという訳にはいかない。ゴム部分は必需品なのに。先の尖った金属棒を床に刺すという日常良くある行為を、いつも快く許してもらえるとは限らない。

消耗してきた時には、仕方なく、椅子等の脚端部品として売られているゴムを買って来ることになる。この脚端部品、実用上は差し支えなくても、見た目が今1つになってしまう事が多い。内径は比較的種類があり適合するものを選べるが、ゴムをはめるスリーブ部分と丈が合わなかったり、形が今1つだったり。細かいことだけど、どうも気になるのだ。

消耗品なのに交換部品が手に入らないのは辛い。流通の問題なのか?それとも私が知らないだけで、最近では専門店で気軽に買えるようになっているのだろうか?

2007年3月14日

弦高の変動など2

コントラバスで驚くのは、一見したところ、木材の伸縮を吸収する仕掛けが見当たらないことだ。ロワバウツの巾は70cm位はあるから、その1%(弦高の変動など1参照)は7mmにもなる。

無垢材の家具では、繊維が直交するような接合をする場合、伸縮を吸収するため接合部が動けるように作る。もちろんガタガタでは機能が果たせないので、密着はしているが伸縮方向には動けるようにする。蟻型の溝の中を材料がスライドできるようにしたり、木ネジの穴を長穴にする。接着は部分的には出来るが、全体を接着してしまうことは出来ない。

ところが、コントラバスを含む弦楽器では、全ての接合個所は膠(にかわ)で接着されるので、動く余地が無い様に思える。今まで「長年シーズニングをした十分に乾燥させた材で製作しているので、伸縮は無視できるのかもしれない」と自らを納得させていた。無理やりだ。伸縮を無視するにはコントラバスは大きすぎる。人生晴れの日もあれば、雨の日もあるというのに。

長年疑問に思っていたのだが、最近読んだ物に、フラットバックの裏板の「たわみ」についての記述があった。それで、伸縮は「たわみ」で吸収しているのだろうとようやく思い至ったわけである。言われてみれば至極当然で、周知のことなのかもしれない。筆者にはとても新鮮で驚きだったが。

この「たわみ」が「弦高が湿度で変化する」ことに影響与えているのではなかろうかというのが、今回の主旨である。それでは、影響を与えている仮定して、どのように影響を与えていると考えられるだろうか・・・
ようやく話が弦高に戻った。

2007年3月13日

クロスバーの接着など


フラットバックの楽器の裏板には、クロスバーと呼ばれる桟が入っている。
ご存知の通り、木材の伸縮率は繊維方向と繊維に直交方向では異なるため、クロスバーのように繊維を直交させた接合は伸縮によるストレスを受けやすい。クロスバーの端が浮いてきて、ノイズが出るような事もある。

クロスバーの端が少し浮いたくらいなら、表板を外すような事をせず、f孔からの作業で済ませたい。「本格的なレストアは頻繁には出来ないから、将来一流の人に徹底的にやってもらう時まで小修理で乗り切りたい」のである。こういうやり方は特に地方では現実的な解だと思う。

膠を流しこむだけでもノイズは止まると思うが、圧締出来た方が接着強度が出るし、小修理とは言え、出来るだけの事はしたい。上下のクロスバーはf孔から遠いので圧締するのは少し骨だ。内部に押さえの板を入れて、f孔から丸棒で押す方法を考えてみた(写真)。これだと楽器を載せている作業台と押さえの板の間にのみ圧締する力がかかるため、他の部分にストレスがかからない。

圧締の方法には、他に魂柱の様なつっぱりをかませて押さえる方法もある。ひょっとしたら素晴らしく便利な専用のクランプが存在しているのかもしれない。

2007年3月12日

弦高の変動など1

弦高は湿度によって変化する場合がある。
湿度と言うことは、季節によって変動がある場合があると言っても良いかもしれない。ただ、これも例のごとく楽器によって多少がある。セットアップとは直接関係が無いが、興味があるので、弦高が湿度によって変動する理由について考えてみたい。

木は湿度に依存して伸び縮みしている。無垢の木を用いた木工では、木の伸縮を無視すると、割れや破損に結びつく。木の伸縮には方向性があって、繊維方向には殆ど伸縮しないが、繊維と直交方向には約1%ほど伸縮する。だから、繊維が互いに直交するような接合には、伸縮を吸収する仕掛けがあるのが普通だ。

コントラバスで驚くのは、一見伸縮を吸収する仕掛けが見当たらないことだ・・・

2007年3月11日

弦高など

弦高は本当に人それぞれだ。 ホームページ上では、標準的な値として6,7,8,9mm(G,D,A,E)を揚げたが(指板の駒側の先で測った値)、これもあって無いような値だ。

プレーヤーの好みや奏法はそれぞれだから良いとして、楽器のセットアップとして弦高に関係が深いのは、キャンバーと言われる指板の反りだ。反りの量は、最深部の深さで測っている。最深部の深さだけでなく位置も弦高に影響する。同じ深さのキャンバーなら、最深部が上ナット側に近くなるほど低いポジションの弦高が高くなるからだ。最深部を上ナット側に近づけるメリットが良く分からないのだが、実際にはそう言うセットアップの楽器もある。G線側とE線側で量を変えてある(経年変化?)ものもある。

キャンバーが全く無い指板は、あるものに比べて弦高を高くセットアップする必要があるように思うが、これも好み・奏法によろう。キャンバーが無いと、ハイポジションに行くに従って弦高はリニアに増加する。適切なキャンバーがあると、これを弦高が一定に近づけるように補正できる。この辺の詳しい事情はヴァイオリンと共通で、ネット上にも解説がある。

2007年3月10日

駒の溝など

駒の弦の通る溝を作る場合、弦と直交方向の断面は、基本的には使用する弦の径にフィットするような形にしている。この形に付いては色々好みもあろうかと思う。話題にしたいのは、弦に沿った方向の溝の底の形だ。上ナット方向とテールピース方向に向かうようにRを付けると、弦が駒に食いつくのを防げるように思う。言えば馬の鞍に似たような形。駒の上部をこのRで成形して、深さが一定になるように溝を付ける方が良いと思うが、弦高を自分で調整する場合、簡易的には溝だけの成形でも問題無いと思う。成形が終わったら、最後に鉛筆で仕上げている。

2007年3月9日

上ナットなど

上ナットを新調する時、接着していない。上ナットは接着されるケースが多いように思うが、接着しなくても特に問題無い様だ。もちろん弦を全て外すとポロッと落ちるので、落ちない程度に付けておく方が良いのかも知れない。接着していない事の利点は、交換が容易であることだが、一旦気に入ったセットアップになれば、そうそう交換するものでもないと思う一方、通常は全ての弦を一度に外す事は無いので、それなら接着していなくても良いかとも思う。

2007年3月8日

またアジャスターなど


先日アジャスターを付けた時には、アジャスターから下の部分(足側と呼ぼう)を比較的長くするようなメソッドで取り付けを行った。個人的に見たことがあるのは、アジャスターから上の部分(脚側と呼ぼう)の長さを比較的多く残したやり方だが、足側を長くしたほうが駒の振動を抑制しにくいという。駒が振動しやすくなると、音量は増すが音は柔らかくなるそうだ。どの部分で切っても、アジャスター部分で駒の材料は切れているのだから、振動の自由度は増す方向だと思うので、いずれにしても音は柔らかくなりそうだ。 アジャスターとりつけ後弾いてみた感じでは、音量は良く分からないが、音は柔らかくなったように思われた。今回は、アノダイズされたアルミのワンピースのアジャスターで、ネジはインチのものを使用した。色は黒。

2007年3月7日

アジャスターなど

楽器の付属品やセットアップにはコントラバスに特有のものがあって、駒の高さを調整するアジャスターもその1つと思う。余計なものは本来は無い方が良いのだろうが、近くに専門店が無かったり、弦高の季節変動が大きい楽器では有った方が実用的である。
アジャスターには主に塊からネジ部分とピンを削り出したタイプと、ネジおよびピン部分と円盤部分が別体のものがある。一般には、塊から削り出したタイプの方が精度がありそうだが、個体差が大きかろうと思う。
ネジ部分は、国内ではM6のピッチで、海外では1/4" 20TPIのものが主流のようだ。インチのピッチの方が粗いので、メネジが木質の時はインチの方が少し有利の様な気もする。アジャスターの材質が、黒檀等の堅木の場合には、ネジの径はもっと太くなるようだ。