2007年11月28日

エッジ補修2


表板の繊維が繋がっている部分を極力残して接着面を成形し、それに合わせて、継ぎ足す材料を作る。木目の間隔が合う材料を選び、木裏木表を確認して製作すればよりフィットするのではないだろうか。

接着面の一部に木口が残ってしまうので、写真手前側のもともとあった割れを利用して、後ほど補強する事にした。


補修部材を接着後大まかに成形してから、補強部剤を兼ねた外側の部材のための接着面を成形する。この接着面は、以前からあった割れの補修跡と象眼の境を利用して、scarf jointするためのものだ。先に接着した部材を外から支えて、小口接着部分の強度を補う意図がある。

2007年11月26日

エッジ補修1

コントラバスは、床に置いたり、椅子に立てかけられる事が多いから、楽器のエッジが痛みやすい。

ガンバタイプの楽器では、ヴァイオリンの様に目切れしていないが、それでも角の部分は痛みやすく、この部分が補修されている楽器を見かける事も多い。良く見ると新たな材料を継ぎ足してあったりする。この楽器の場合も、残る3箇所も補修がされていた。弓先がヒットすることもあるし、表板は裏板より柔らかいから、表板の方が痛みやすいのではなかろうか。

写真の楽器のエッジは、単に割れたわけではないので、割れたかけらを接着して終わりと言うわけにはいかない。オリジナルの木部をなるべく残すようにして削り、接着面を作らなくてはならないが、木口面は接着の強度が低いので少し工夫する必要があるように思われた。幸いな事に、側板までは損傷していなかった。

2007年11月17日

指板を修正する

楽器を弾いていれば、指板も減ってくる。ハーフポジション近辺は、使用頻度も高いので、弦の当る部分が減って溝を作ってしまうことがある。

こうなると、減った分だけ弦高が高くなり、押さえるのに余分な力が必要になる。溝の深さが0.2mmもあれば、相当に負担は増えるはずである。指板の厚みに余裕があれば、指板を削りなおして修正が可能である。

このとき掘れてしまった溝の近辺だけでなく、全体に渡って均一にキャンバー(反り)が施されるように削りなおす必要がある。掘れた近辺だけを削ると、見た目は綺麗になるが、先のハーフポジション付近の弦高は高いままなので、演奏にとってよいことは一つも無い。確かに、一部だけを削る方が圧倒的に楽なので、良くない誘惑があることは確かだ。さらに全体に渡って削る場合、当然上ナットや駒の調整が必要になることもある。掘れた部分を削るだけなら上ナットの近くだけを残せば、ナットは正しく調整されているように見えるわけである。

要は、指板全体を均一なRに仕上げる為には、技量も要るが手間がかかるということだ。場合によっては、G線側のキャンバーを浅めに、E線側を深めにというような配慮が必要な場合もあるし、黒檀は必ずしも削りやすい素材ではないのである。安く直してもらうに越した事はないが、仕事のクオリティを正当に評価する姿勢が無ければ、演奏しにくくなるだけの補修が蔓延してしまうのではないだろうか。

2007年11月9日

ウルフキラーとミュート

以前、Torteタイプのミュートは、ウルフキラーと干渉すると書いた。

しばらく悩んでほったらかしにしておいたが、ミュートをG線とD線に付ける方法に気づいた。こういうのは、悩んだ瞬間に思いつかなくてはならない類のものである。つくづく情けないのである。

2007年11月5日

半音の巾

Cエクステンション(Cマシン)を作るときには、半音の巾を知る必要がある。

コントラバスの場合は弦長が様々なので、キット化されて販売されているエクステンションでは、カポの位置を調整できる様になっていると思う。逆に調整できなければ、特定の弦長のコントラバスにしか取り付けられないということになって、おかしい訳である。筆者の場合は、取り付ける楽器に合わせて、カポの位置を固定してしまうので、弦長からカポ位置を計算する。

半音の巾は、2の12乗根を用いて計算することが出来る(平均律の場合)。オクターブで振動数が2倍になるから、12回掛けると2倍になる様に半音の巾を決めるということだと思う。計算すると、弦長が106cmの時には、開放弦から半音上がった位置までは、5.95cmということになって、結構な巾である。次の半音までは5.62cmなので、先の半音と足した11.57cmが、ハーフポジションでの1指から4指までの距離だ。エクステンション上では、半音の巾はもっと広くなって、C-Cis間は7.5cmにもなる。

これらの値は、理想的な弦について計算したものだから、エクステンション上で、コントラバスのような太い弦を使った場合に、計算どおりいくのか疑問に思っていた。エクステンションのモックアップなどを制作する段階で、チューナーを使って確認したところ、思いのほか計算どおりの位置で正確な音程になった。もちろん、もとの指板の反りが適正で、それに沿ってエクステンションを付けるという条件のもとである。エクステンションが指板に沿っていないと、不必要に弦高が高くなって、半音の位置も計算した値から離れて行くのではなかろうか。