2009年3月24日

駒の形


大体の方向は同じになると思うが、当然のことながら、駒は全く同じ形にはならない。

駒の幅や高さが異なるため、細かい配分などは楽器によって違ってしまう。指板のRにも影響される。駒の高さや弦の間隔などの実用的な寸法が正確にできていれば駒としては問題ないけれども、それらの寸法を、出来るだけ良い形にまとめたいと思うのが人情ではなかろうか。

駒のどこを残してどのような形にするかは、駒の厚みや重量等とも関係するので、すべて自分の勝手に決められる訳ではない。それでも、仕上げのちょっとした違いで見た目は大きく変わってしまう。というような事を考えながら、毎度辿り着くのがやっとだ。辿り着いたものを妻に見せ、色々と能書きを語っていると、
「駒って、何故こんな形になったの?」
「・・・・・・・・知らない。」

2009年3月20日

脚の長さ


この楽器の表板には、魂柱側に少し陥没があって中には魂柱パッチが貼られている。

今回アーチを直すことはしないので、魂柱側が低い分だけ駒の片方の足を長くしなければならない。脚の長さを調節して、駒の位置を楽器の中央に保ちながら弦の位置を指板に合わせる。

左右の足の長さが違うと、駒の運動の支点の相対的な位置が変わるので、元々の状態とは条件は変わる。とは言っても、現実には左右が全く同じ長さになることはあまりなく、多少なりとも違う場合が殆どである。多少ならあまり問題は無いようである。写真は、加工前の駒を仮に立てて、チェックしているところで、この時点で駒全体の高さに対する駒の脚の長さも決める。

2009年3月12日

側板


古い楽器にリブ(側板)の割れは付きもののようだ。

蝶ちぎりの楽器にも割れているところがあった。リブの補修では、楽器のテンションを開放する必要があるし、接着面に目違いが生じないようにしなくてはならない。

今回のケースは、割れたというより、古い割れを修理した部分のうち、パッチの当たっていない所が開いていたというべきかもしれない。リブは薄く、接着面積が小さいため、何らかの補強をしないと開く事もある。筆者は、f孔から作業する場合には、リネンパッチを使う事が多い。リネンパッチはヘビーにならず、曲面にもよくフィットする。場所にもよるが、木質のパッチをf孔からの作業で完全にフィットさせるのは難しく、フィットしていないパッチは後々トラブルのもとになりやすいのではなかろうか。ただ、リネンパッチは湿度の影響を受けやすいので、場合によっては、使う膠にも配慮が必要になるかもしれない。

2009年3月10日

Re: 蝶


コメント欄には写真が載せられないようなので、補足の写真を掲載します。写真中の赤線の部分が蝶ちぎりです。上下に分かれた部分が離れないように補強する意味合いがあります。教授さんコメントありがとうございました。

2009年3月3日


蝶ネクタイの形の仕口は、蝶ちぎりと呼ばれる。

コントラバスの接合部は基本的には膠による接着である。シンプルな接合方法が用いられているのは、分解補修を容易にする意味もあるように思う。ということは分解する必要の薄いところは、仕口を使っても良いのかもしれない。蝶ちぎりは、接合した二つの材料を引き付ける効果がある。ただ、中に入れるちぎり部分と周辺の材料の木目が直交するので、良くも悪くも仕口自体が意匠として現われてしまう。

楽器のオリジナリティーを保存しようと思えば、仕口は見えないに越したことはない。しかし、この楽器の場合は、チューニングマシンの雰囲気ともあいまって、何とも良い味になっている。蝶ちぎりは英語でもButterfly keyと呼ぶようだが、Double dovetailともいうようだ。Dovetailは日本語では蟻で、洋の東西を問わず木工関係の用語には、何故か動物にちなんだ名前が多い。