2009年12月4日

ネックリセット


ネックの接合部分は、楽器の中では唯一と言っていい位、仕口らしい仕口である。言えば締まり勾配のついた蟻ホゾという所か。強度のある仕口にするには、物理的な形による接合強度もあるが、膠で接着するわけだから、互いに密着していなければならない。コントラバスの場合、ネックの強度におけるボタンの寄与は、ヴァイオリンで言われるほどは大きくないとも言われている。本当かどうかは分からないが、仕口全体の接着面積に占めるボタンの割合によるだろう。いずれにしても、仕口部分が精度良く作られ、接着が良く効いていることが前提である。

ネックをリセットする時には、先に述べたOverstandを変えるかどうか検討する。今回、overstandは標準的な寸法の範囲である。オーナーの方はオーケストラ中心に使用されているという事であり、最初に試奏させていただいた感じから、overstandは変えない事にした。もっとも、指板を新しくする事で、指板の厚みが増える分overstandを増やすのと同じ効果を期待したためでもある。Overstandを大きく取り過ぎると、楽器の厚みが増えたのと同じになって、ネックが体から遠くなってしまう恐れもあると思う。特にこの楽器はアッパーバウツの幅が大きいため、普通の音域での負荷とハイポジションでの負荷のバランスをとる事が必要ではないかと思う。

ネックリセットは、ネックのセンターを楽器のセンターに合わせ直すチャンスでもある。表板のネックbuttの中心、f孔間の中心、センターシーム、楽器の巾の中心と測るところはいくらでもある。また、裏板のボタンや裏板のセンターシームとの整合も取る必要がある。これらは全て一致するわけではなく、事前に着地点を検討する必要がある。全ての値を希望する値にしつつ、ネックとブロックが仕口として正確に合うように削っていく。コントラバスは、その大きさもあり、取り付けては測り、外して削り、また取り付けて測るという繰り返しは大仕事だ。レーザーで基準を決めておけば、仕事は幾分楽になる。

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