既にネックは少なくとも一度リセットされていた。ネックブロックの写真右側は埋め木がされていて、深さは分からないが新しい木が追加されている。また、左側の古い部分は、剥がれたが付けなおされた状態で、接着には隙間があり、ネックを良い状態で支えられるとは思えなかった。さらにサイドに入れられたシムは、部分的に入っているだけで密着度が低いうえ、壁自体にも亀裂が入り、ブロックとは一体ではなくなっていた。



ネックの方は、綺麗にクリーニングする。今回は、部分的に膠ではない接着剤が使われていたので、クリーニングには時間がかかった。膠でない接着剤は、除去に時間がかかるだけでなく、完全に取り除くのは難しい。一部残った部分もあるかもしれないが、殆ど影響は無いと思う。
裏板のボタンと接着されるヒールの部分は、大きく面がとられていた。この部分は多少は、面取りした方が良いが、面にしてはあまりにも大きいので、木を足した。木口接着に近いが、ボタンとの接着面積を多少は稼ぐだろう。
今回の指板交換に伴う、ネックリセットとブロック補修は、オーナーのかたには、予想外の出費となったと思うが、結果的には良かったのではないだろうか。外からは見えない部分ゆえに、こういう機会でもなければ、ブロックの状態は分からなかったのではないだろうか。
4 件のコメント:
紹介していただいた楽器のオーナーです。今回は予想以上の大きな修理となってしまいましたが、修理いただく前と後では、楽器の効率という点でまさしく雲泥の差となりました。反応や音量が大きくアップし、弾くのが純粋に楽しいです。
ブロックは直接見えず意識したこともほとんどありませんでしたが、土台から直していただいたおかげで、楽器に一本筋が通ったような感じです。ありがとうございました。
ネックの接合方式が楽器のキャラクターの一要素となっているということですが、確かに、外から見える部分に限っても、いくつかのタイプがありそうですね。製作された年代や地域によっても特徴があるのでしょうか。
それでは、ブログも引き続き応援しています。
fendtさんコメントありがとうございます。
おっしゃっていたように、ネックを持った時の人の手の感触は、かなり敏感なのではないかと思います。接合部分だけでなく、ネックと指板の接合部分の状態によっても、何となく感じる事があると思います。良い楽器に巡り合われて純粋に楽しいのは、本当に素晴らしい事ですね。
楽器の音色やもともとの特性は、製作者の意図であり、変えられないものだと思いますので、リペアに求められるのは、やはり効率を上げるという事になるのではないかと思います。前にも書いたかもしれませんが、まさに作曲家と演奏家の関係に似ていると思います。
製作年代や地域などの事は、すみません詳しくないので分かりません。楽器の構造を拝見して、どういう音の方向性の作りなのかが少しわかるだけです。
ネックの接合の深さ以外にも、楽器の形や、表板の厚み、ブロックやライニングの大きさなどの要素が組み合わさりますので、実際にはセットアップして見るまでは、結局私には分かりません。分かる人には分かるのかもしれません。
ブログの応援ありがとうございます。これからもどうぞよろしくお願いします。
いつも楽しく拝見しております
修理・調整過程の仕上がりの写真を
拝見するだけでも気持ちの良い仕事を
されているなあといつも思っています
ネックとボディの接合部は
あれだけの重量と、弦のテンションを
受けているネックを支えているのですから大変重要なファクターなのでしょうね
これからも頑張ってくださいm(__)m
るいださんコメントありがとうございます。
ネックは、しっかり固定されていて、しかも適正に振動する必要があるようです。大きなテンションを受けるネックですが、太すぎるネックはかえって良くないということのようです。
ブログをいつも見て頂いて、励みになります。似たような作業でも、楽器によってコンディションが違うので、毎回悩んだり苦しんだりの連続です。作業の結果が、「何の苦労もなく自然に当然のごとくそうなっている」ように見えるのが理想ですね。頑張りたいと思います。応援よろしくお願いします!
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