2010年4月25日

black bass 4 魂柱の跡

魂柱が表板に喰い込んででしまっていた。

魂柱パッチが貼られていて、この魂柱パッチ自体の精度もあまり良くなかったので、傷ついていてもあまり惜しく感じないのは、不幸中の幸いである。将来開けた時には、魂柱パッチはやり直すだろう。

今回は表板は開けないので、ささくれた部分を外から取り除いた。ささくれのようなものがあると、魂柱を合わせるのはとてもやりづらい。以前、なかなか魂柱が合わず、頭を悩ませた事があった。その時は、裏板に付いた小さなニカワの塊が原因であった。
今回の魂柱パッチの表面は魂柱の傷以前に表面に凸凹があるので、ささくれが無くても、魂柱はある程度妥協してフィットする必要がある。あまり正直に合わせてしまうと、調整で動かした時に合わなくなってしまう。でっぱりは踏んで、くぼみはまたぐという感じか。

魂柱が食い込むのは、魂柱の角が当たっているからで、これには魂柱が合っていない場合と、魂柱が斜めに立てられている場合がある。場合によっては、音のためにわざと斜めにする場合もあるようだ。
音のためでも、どの位斜めにするか、程度問題なのではないか。音に変化を与えるが、表板に大きなダメージを与えない程度の斜めというのは、日常の感覚の斜めとは違うのではないかと思う。

ところで、魂柱はどの位の強さで入っているのか、と言う事に関しては筆者はあまり情報が無いが、Bollbach氏のサイトには少し記述があって、「もし、楽器の側板に穴があって手を入れられるとしたら、正しくフィットされた魂柱をつかんで、楽器を持ち上げてグルグル振り回しても、魂柱は動かない」位のテンションがかかっているという事である。本当にそうなのかは不明だけれども、少なくともテンションがかかっている時に魂柱調整をしようとした事があれば、動かすのは容易ではない事はわかる。
一方で、楽器を弾き込むうちに魂柱が良い位置に納まって楽器が鳴ってくるという話も聞く。これも真偽のほどは分からないが、じっと置いているだけの時と違って、楽器を弾いている時には、振動やテンションの変化があり、動く余地が生まれるのかもしれない。

2010年4月16日

black bass 3 エンドブロック

エンドブロックと裏板、あるいはエンドブロックと表板の間の接着が密着していない楽器を散見する。

楽器の内部は、埃だらけで汚れていると決まっていて、それらのゴミや埃がエンドブロック付近に溜まる。掃除してゴミを取り除くと、隙間が見つかる事がある。隙間があれば、必ず問題が起こるという訳ではない。接着面積に余裕がある場所なのかも知れない。

それでも今回は、一旦はがしてつけ直させていただいた。状態が良くなかった。以前の剥がれの記事でも書いたように、まずは接着面のクリーニングを行う。ニカワが水分で膨張しているのもあるけれども、かなりの厚みのニカワを噛んでいて、この楽器では、それがブロックと裏板が密着していない理由であった。裏板は過去に外した事があると見えて、位置決めのピンが入っていた。

ブロックと裏板の密着が気になるのは、裏板への力のかかり方が気になるからで、裏板はブロックを介して上下に引っ張られていると考えているからだ。裏板とブロックの間の接合はニカワによる接着だけだから、密着しているに越したことはないのではないか。現実には程度問題で、接着がより完全なら安全率が増すだけだと考えても良いのかもしれない。

古い膠を落とし、入り込んだ色々なものを取り除くのは地味な作業だが接着面を損なわないように集中力がいる。綺麗になると嬉しいものだ。ニカワだけが使われていれば、木質部分の損傷は最小限で済む。

2010年4月6日

black bass 2

割れるよりは剥がれた方が良い。
継ぎ目の剥がれは、つけなおせば無かった事に出来るが、割れは無かった事にはならないためである。

特に表板は、通常は、薄いニカワで接着されていて、割れに対するフェールセーフ機構として働く事が期待されているようだ。また、表板を開けて修理するという意味からも、外れやすくしておく必要がある。接着で強度を出すには、接着する面同士が密着している事が必要で、ニカワで隙間を充填するという事は宜しくない。接着力を弱めたニカワでは特に注意しなくてはならないのではないだろうか。

今回は、なかなか手ごわく、実際に剥がれている部分の周辺も接着状態が悪い。良くないところを開けていくと、接着範囲はどんどん広がってしまった。新しい接着が有効に働くためには、接着面が清浄である必要がある。古いニカワや汚れ、入り込んだニスなどを取り除いていく。剥がれ修理の殆どの部分はこの掃除が占める。