2011年4月26日

カメラ

カメラを倒してしまった。

楽器のケースをひっかけて三脚を倒してしまった。自分の不注意で仕方ない事だが、慣れ親しんだものが壊れるのはつらい。特に自分で修理できないものはガックリである。

写真を撮るのは、第一には持ち主の方への説明のためで、第二に作業の記録のためである。だから、カメラはとても重要である。許可を頂いたお客様の写真はブログで使わせていただき、皆様に見ていただく事ができる訳である。

本格的なカメラには及ばないと思うが、小さいカメラにも利点がある。このカメラは、レンズの筒の部分がエンドピンの穴に入り、買った当時としては広角だったので、楽器の内部が比較的広い範囲で映った。ただ、手ブレ補正もないし、レンズも暗いので、三脚を使う必要がある。ともかく、筆者はカメラには詳しくないし、三脚につけっぱなしで工房に置いておくのにはちょうど良かった。

実は、このカメラを倒したのは2回目で、一回目は倒れる途中で気付き、足を伸ばして受けたので、なぜかオートフォーカスが2回繰り返されるようになったものの、なんとか使えていた。
今回は倒れるまで気づかなかった。Mama don't take my Kodachrome away!

2011年4月24日

セルフネックのコントラバス6

 テールガットは、かなり太い針金であった。

どうやって入れたのか分からないが、テールピースの裏側には、針金を入れる過程でついた傷があったし、ガットを通す穴の一部には亀裂も入っていて、苦労の跡がしのばれる。
針金をねじった部分は、テールピースの中に納まりきらずに出っ張っており、サドルが低いのとあいまって表板に傷をつけていた。針金は取り除き、新しいテールガットに交換した。

 表板のニスは一応目立たないように修正したが、サドルは低すぎて、テールピースが表板に触れそうである。表板のアーチがサドルの近くからすぐに始まっているのも一因である。今回は、いろいろな事情で、サドルに部分的に黒檀を足して、しのぐことにした。楽器の感じからは、将来的にはハイサドルにしても良いと思う。
 この楽器には、falese nutがついていた。弦長を短くする手段の一つだが、ちょっと特殊な製作方法であったこともあり、材をエボナイズして、成形もして見た目に違和感が少ないようにしてみた。

駒を作り、弦を張ってみると、予想にたがわぬ良い反応である。少しウルフが強くなったかもしれない。ウルフキラーをつけて、具合をチェックしていただくことにした。

家人に支えてもらって、写真をとった。アッパーバウツが大きめななりに良い形をしているし、体積に余裕があって鳴りが深い。今回は力及ばず、合成系接着剤が残った部分もあるが、持ち主の方に愛されて、これから幸せになっていけると思う。

2011年4月17日

湿度計

新しい湿度計を買ってみた。あまり高価なものは必要ないが、ある程度信頼できる数値は欲しい。

デジタルの方が正確という情報を頂いていたが、毎日見るものでもあるし、針で示すタイプが好きなので、迷った末アナログのものにした。精度の範囲が示されているものなので、表示通りなら問題なく使えるはずである。

今使っているものも、精度範囲が示されている。ただし、先代からの更新以来何年もたつので、経年変化があるかも知れないと思っていた。

新旧で表示が違う。10パーセント位違う。50が60でもあまり問題ないが、30か40かとなるとちょっと問題である。どちらが正しいのかそれぞれの読みだけでは分からない。もうひとつ買っても、結局は同じ状況になってしまう。

ふと、湿球を作ればよいと気付いた。手近にあった温度計で湿球を作り、乾球との温度差から湿度を求める。チャートは理科年表に載っているし、インターネット上にもある。湿球が氷結している場合にも湿度が求められると初めて知った。

結果は新しく購入したものとよく一致した。

2011年4月13日

セルフネックのコントラバス5

Cバウツの裏板と横板は着いてはいるが、合成系云々が充てんされている状態である。

これも取り除くしかない。この部分には魂柱が乗るクロスバーがあって、その下の隙間にもしっかり合成系が入っていたので、クロスバーも少し剥がす。剥がしたクロスバーの奥の方はニカワだった。

どうせならと、進めていくうちにかなりな長さを貼り直すことになった。それでも完全には取り除けなかったが、接合部が密着すると気持ちが良い。(写真(上から二番目)はクリーニング前)
しかし、ちょっと問題が残った。先のネックの所でも触れたように、横板がフリーになると、ヘナヘナして元の位置に戻すのにはそれなりの配慮がいる。

この部分も再度接着する前に、横板の配置を試してみたが、どうしても少し裏板が余ってしまう。よくよく裏板を見てみると、余る部分に木が足してある。そういう目で見てみると、足してある部分は少し不自然な形になっている。このことから、木が足してある部分は余って正解という事にして、接着した。

最初の状態で、隙間が接着剤で充てんされていた時には余ってなかったのが不思議だ。ともかく、余った部分にはニスを塗り、持ち主のかたに見ていただいてから、必要に応じて修正していくことにした。

さて、リセットしたセルフネックは、十分な角度に戻ったが、テンションをかける前に、まだやることがある。

ネックの付け根と表板が当たる部分は、以前の修理で木が足されていた。しかし木の使い方が悪く、強度が無いため、足された木は弦のテンションでつぶれて隙間ができている。この部分は、弦のテンションを表板に伝える重要な部分で、ボタン側をいくら修理しても、ここが持たなければ、ネックは再び下がってしまう。セルフネックの楽器だから、うめ木が横から見えて不思議な感じがする。オリジナルの状態では、表板はうめ木の分長かったのかもしれない。


2011年4月10日

セルフネックのコントラバス4

 ネックのヒールと裏板の隙間を埋めるプレートを作る。

このプレートと、裏板が密着するよう削り合わせる。単に密着させるだけでなく、ネックの角度を決める要素でもあるので、様子を見ながら少しずつ進める。
横板の欠けた部分も足した。

横板の裏板への着き方も調整する必要がある。横板が裏板から外れていると、横板の周長は一定だが、ある部分を押しこむと、別な部分が出っ張ってくるという具合に自由度がある。これを出来るだけうまく配分することが必要になる。



話は戻って、このプレートは、ボタンと裏板をつなぐ役割も担う。仮に、プレートの厚みが1mmであっても、木取りが正しく行われていれば、弦のテンションに耐えるだけの引っ張り強度が期待できると思う。

ところで、V型に切られたボタンだが、殆ど鋸の挽き代が無いので感心していた。どうやって切ったのか。答えは、ボタン部分はオリジナルでなかった、であった。ボタン部分の保存は行わず、新たに製作することにした。

 ボタンを新しく製作した後、裏板のオーバーレイパッチを施すことにした。先のプレートにプラスして補強しておく意味がある。

このタイプのパッチは、時折見かける。ボタン部分の損傷に対する補強である。今回は、この部分にパフリングもなく、ボタンはオリジナルでない事もあり、パッチは許されると判断した。

元のネックのラインはパッチにかけて、多少不自然になっているが、パッチのボタン部分の面積を稼ぐ目的がある。ネックにはこの部分以外にも、過去に負った故障があるので、将来的には交換される可能性が高い。ネックが交換されるまで、辛抱をお願いしたい。オーバーレイパッチも、将来ボタンのグラフトが行われるまでの辛抱かもしれない。

2011年4月2日

セルフネックのコントラバス3

いくつかの方法を組み合わせて、合成系接着剤を取り除く。

 切り離されたボタンと裏板をつなぐ補強の板が入れられていたが、これも合成系接着剤で固定されていた。補強の板は、横板との接合部までそのまま続いていて、1mm程度の段差があるにもかかわらず、横板と裏板はかなり無理して張り合わされていた。

裏板がきれいになったところで、横板とネックの接合部分を修正する。セルフネックでは、横板はネック材に掘られた溝に差し込まれて固定されるが、この部分にも合成系接着剤が使われているうえ、横板の接合状態が良くない。
ボタンが外れて、ネックが引っ張られた結果、横板を固定する接着剤はクリープし、横板は中途半端に抜けた状態で、固まってしまっていた。この状態では、横板が突っ張ってネックの角度が修正できない。

最も良いのは、横板をネックからはずすしてから接着剤を取り除くことである。しかし、それでは、ネック周辺を全て分解する事になってしまう。もし、完全に分解するのであれば、現在のネックを再度使用するかどうかも含めて考えた方が良いと思うので、費用が大きく変わる。今回は横板の接着剤は取り除かず修正するだけにした。

接着剤のクリープは、大きな力が長期間かかった結果なので、常温のまま短時間に元に戻すことはできない。 熱をかけて接着剤を軟化させながら、クランプで圧締し、ネックを元に戻していった。フレッシュな接着から比べれば強度は低下していると思うが、一定の強度は保てたのではないか。合成系接着剤の多くが熱で柔らかくなる性質を利用できたことになる。

2011年4月1日

How Insensitive

知人から、もう少し親しみのもてる内容も入れてみたらどうかと提案を受けた。
4月1日だからかもしれない。


弦の振動を正確に表しているのか、カメラの特性による効果を含むのか、筆者には良く分からない。説明によれば、スローモーションではなく、カメラのフレーム数をコントロールして撮影されたもののようである。