2008年10月12日

駒の時間


楽器自体も大変なものだが、駒一つとっても、なんと贅沢なものだろうかと思う。

柾目に木取された駒は放射組織も美しく、年輪の一つ一つに積み重なった時間を思うと、しばし時を忘れる。右側の駒は、年輪の間隔が大きい方だが、この駒の中でさえ60本からの年輪がある。左の方は倍以上の密度がある。木材の芯に近い部分は使われないから、もとの木の樹齢は目に見える年輪の数よりもっと大きい。駒を加工する時、緊張を覚えるのも自然な事だ。200年生ともなれば木としても大変なものである。メープルではないが、以前、訪れたブナの森ではひっそりと水が流れ、畏敬の念が湧きあがってくるのを抑える事が出来なかった。

広葉樹でも環穴材は、年輪の間隔が狭いものほど密度は小さくなるが、メープルのような散穴材ではまた事情が違うようである。放射組織は、年輪と直交するので、駒の上下を繋ぐように走っている。木だった頃は、栄養分を運んでいた組織が、駒になってからは音を運ぶために利用されているという事だろうか。

4 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

「木」の悠久の時間、そしてそれを寝かせて使える状態にするメーカー(写真は、オーベルトでしょうか?)に畏敬の念すら覚えます。

市販の状態から、「使える」駒への削りに関心があります。左のものは、下書きがありますね。その後の作業の経過も、(可能であれば)アップして下さいませ^^♪

yamaguchi さんのコメント...

ひろtさんコメントありがとうございます。

写真のものはAubertではないのですが、同じくフランスの駒です。経過を逐一撮影している訳ではなく、また、製作方法は企業秘密・・・というのは冗談ですが、私の行っている方法も少しずつ変化しています。いずれ何らかの形でご紹介できるかもしれません。

駒の加工で演奏家が気になるのは、音に与える影響だと思います。厚みをどうするか、駒のスタイルをどうするか等の選択は全て音のためだと言えます。楽器自体の特性と、オーナーの方の演奏スタイルにも依存する話です。もちろん、その時使える駒という制約もあります。ですので、結局は、駒の削りをどうするかと言う事は、ケースバイケースと言いますか、一意の解は無いと言う所に戻ってしまうわけです。

匿名 さんのコメント...

駒も私の頭を悩ませるものの一つです。

写真のものはおそらくデス○オ社の駒でしょうが、私も3マークの方を試したことがあります。
そのときは、随分はっきりした音がでるようになった記憶がありますが。。

一般に出回っている情報としては、弦高と音との関係がありますが、それ以外の駒と音に対する情報というのは圧倒的に欠如していると言わざるを得ないと思います。
プレイヤーがそこまで知る必要はないという意見もあるでしょうが。。
駒の厚み、駒足の幅、駒足の削り接弦面のアール、面取り…等。
駒のメーカーと音や、安物の駒と高価な駒の違いなど、確実なソースがない(探し方が足りない?)です。
いまだ「これだ!」という駒に出会えていませんが、価格高騰と資源の枯渇で少し焦っています。

最近随分弦高が下がってきたと思えば、もう冬も間近なんですね。
このままの調子で行くと、真冬には実用外の高さになってしまいそうで心配です。。。

yamaguchi さんのコメント...

きゃっつさんコメントありがとうございます。

おっしゃるとおり、演奏家であれば気になるのは自然の事ではないでしょうか。駒のセットアップについて詳しく知る事は決して無駄ではないと思います。

あらゆる可能性を試して、その中からベストを選んでいくと言うやり方にも、楽しみや良い面があると思います。こだわれば、無限に近い選択肢があるのではないでしょうか。もし近道を探すとすれば、陳腐な言い方ですが、専門家に希望を伝えて、アドバイスを受けると言う事になるのではないかと思います。同じブランドの同じグレードの駒でも、同じ木は2つは無い訳ですから、削った感じや、弾力の感じなどの感覚を結果に反映させることにも繋がるのではないでしょうか。

弦高の変化する楽器のメンテナンスは頭の痛いところです。夏駒冬駒か、実用的にはアジャスターという事になるでしょうが、アジャスターを入れると言う事になれば、さらに選択肢(悩み?)は増えることになってしまうかもしれません。