2009年2月24日

指板の裏


コントラバスに限らず、指板の裏は彫りこんであって、重量を軽くしている。

この部分は外から見えにくいので、大抵の楽器の場合はそれなりの仕上がりのように思う。機械の刃の跡が残っていたりすることが多いが、機能的に問題となる訳ではない。この楽器の場合は、彫りこみの量が極端に少なく、必要以上に重量が残っているようであったので、指板を外したついでに裏側の彫りこみ量を増やし、さらについでに綺麗に仕上げた。彫りこみ自体は意味のあることだが、綺麗にするのは気持ちが良いだけで音には関係ないし、余計なコストと言えるかもしれない。

一通り彫りこみを綺麗にしたら、端に割れが入っているのに気づいた。都合良すぎる話に思えるかもしれないが、良いこともあった訳である。

5 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

お初にお目にかかる、三河の国の住人・Bass爺でござる。

「綺麗にするのは気持ちが良いだけで音には関係ないし」とはまたご謙遜である。「綺麗にする」ことが「気持ちがよいだけで」終わるはずもなく、必ずや「音」にも関係してくるのでは?

巨人での現役時代の王貞治選手が言った次のような言葉は、今も私の心に深く刻まれている(永六輔氏の採取による)──「過ぎたるは及ばざるが如しという言葉があるけれど、プロの場合、過ぎたるに越したことはないんですよ」。

外から見えるところだけ綺麗にして良しというのが、現代のスタンダードかもしれないが、本来「外から見えにくい」ところまで気を配るのがプロの仕事というもの、最近ではとんと見かけなくなりましたな(弦を交換するときスクロールの中を覗き込んでは、もう少し綺麗に仕上げてくれればいいのにと、いつも思います)。

ともあれ、そうした丁寧さでもって修理された楽器が、その演奏者(音)になにも影響を与えないというのは、なかなかに考えにくいものです。

匿名 さんのコメント...

(承前)久しぶりに引用したので、端折ってしまった言葉があった。改めて書き記すしだい。

過ぎたるは及ばざるが如しという言葉があるけれど、あくまで如しであってね、プロの場合、過ぎたるにこしたことはないんですよ──王貞治

70年代の学生の頃、『話の特集』に連載されていた永六輔「芸人その世界」で知りました(もちろん立ち読みです)。芸人に混じってスポーツ選手の言葉が採録されていたのが(当時としては)珍しく、記憶に残っています。

yamaguchi さんのコメント...

Bass爺さんコメントありがとうございます。

「過ぎたるに越したことはない」とはさすがに王選手です。実践された方の言葉は重く感じられます。私の(木工の)師匠は、テーブルや椅子の脚の裏に、勝手墨(パーツの方向が分かるように付ける印)が残るのを許しませんでした。ひっくり返せば見えるという理由でした。

おっしゃるように糸倉の中まで綺麗な楽器は、他の見えないところも同様に綺麗に作られているという感じはします。ただ、現実には費用の問題からは逃れられないので、ある程度現実的な選択は許されるのではないかとも思います。先のテーブルの例だと、墨が残るのはみっともないが、テーブルトップと同じクオリティの仕上げである必要はないわけです。指板の裏もどの程度に仕上がっていれば良いのか判断が分かれるのでは無いでしょうか。

他のものと同様、木の加工でも表面を綺麗に整えて仕上げることは手間と時間がかかります。仕上げを簡単なものだと誤解されている事が多いのですが、手間がかかる故に、手が抜かれるケースがあるということでもあります。今回はついでがあったからできたことですが、これからは単に悩むだけでなく、王選手の言葉を思い出しながら悩むことにします。コメントありがとうございました。

匿名 さんのコメント...

山口さん、スクロールは一番上の飾りの部分、弦を巻き上げるところは Peg Box(糸倉)でしたな。年を取ると悲しいかな、こうしたところで間違える(最初から日本語を使えばよかった?)。

私の楽器はそれなりの金額のものなので、そうは思ってもそれで腹が立つ訳ではない。それより満身創痍のわがコントラバスを、貴殿のような方にこそ一度見てもらいたいとこのブログを隅から隅まで(何度も)読んでいて思います。三河の国から陸路では大変なので、いっそ舟を仕立てて三河湾から日南海岸を目指す夢を見るこの頃です。

yamaguchi さんのコメント...

Bass爺さんコメントありがとうございます。

私もペグボックスをスクロールと呼ぶ事があります。用語に関しては、このブログでも適切でないものがあるかもしれません。楽器を遠目で見ているときは、ペグボックスを含んでスクロールと言っても違和感は無いように思います。

満身創痍とは大変です。もし割れなどでしたら、時間とともに変形が進むので、当方にお持ち頂くかどうかは別にして、早めに修理することをお勧めします。ブログを読んで頂いているとのことで、励みになります。私はその道の権威でもなく、体系だって書いているわけでもないので、怪しい部分はあると思いますが、今後ともお付き合いをよろしくお願いいたします。