2008年4月23日

N氏の楽器1---指板


ジャズベーシストのN氏に楽器をセットアップする機会を頂いた。

N氏にご快諾頂いたので、一連の内容について少し紹介させて頂けることになった。今回は、指板とナットの調整が主な依頼内容であったが、その他にも行った方が良いと思われる項目がいくつかあり、相談させていただいたうえで作業を行った。

ところで、筆者の工房の窓には、直射日光を避けるためのブラインドがかけてある。意図したわけではなかったが、規則正しい模様が指板への映り込むと、指板削りのクオリティを確かめる事ができる。

写真は、一通り作業を終えた指板をナット側から見たところである。ナットは外してある。ブラインドの映り込みの線が滑らかな曲線を描いていれば、指板の曲率が不規則になっている部分が無いと言う事になる。ただし、指板は映り込みを完璧にするために使うわけではないから、実際には許容範囲がある。

以前にも書いたように、指板を削る場合には2種類の定規を使って進め、弦高の推移が滑らかになるよう、また、弦が雑音を出さないように削って行く。楽器を弾く場合、押さえた弦の上側(ナット側)が、指板に当らないようにしなくてはならないし、反りの量を適正にしなくてはならない。

写真を厳しい目で見れば、G線側の最高音近辺は多少歪みが残っているので、個人的には、ここを完璧にしたい気持ちになってしまうが、指板を長持ちさせる事も考える必要があると思う。もちろん当然の事ながら、演奏が快適に出来ると言う事は、言うまでも無く大前提である。写真の指板は、実際の使用上は全く問題が無い。黒檀は高価な材料であるし、調整すれば薄くなってしまうから、補修を最小限に抑えれば、長く使える。将来、指板が薄くなってきた時、最後のひと削り分が増えるという訳である。

また、実を言えば、E線上の最高音付近には殆ど曲率が無い(E線全体としてはキャンバーはある)。これは映り込みからは分からないが、元々この部分が低かったため、ここにキャンバーをつけると、全体の切削量が増える。指板の先端でE線を弾く頻度から考えて、今回は削る量を少なくし、指板を長く使う事を優先したわけである。

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