結局は、リペアラの視点で書くことしかできないとは思うが、続けてみる。
プレーヤとして最初に気になるのは、弦高ではなかろうか。弦高とは、指板から弦までの距離のことである。
注意しなくてはならないのは、弦高を決めるということは、指板からの距離を決めるだけでなく、弦相互の位置関係も決めているということである。言い換えれば、弓で弾く時に隣の弦を一緒に弾かないためのクリアランス(以降「ボウイングクリアランス」と呼ぶが正しい呼び方かどうかは分からない)も同時に決めていることになる。pizzのみのスタイルのプレーヤにも、より弾きやすい位置関係はあるので、それも含めてここではボウイングクリアランスと単純に呼ぶ。
このクリアランスは、駒上での弦の間隔にも依存するので、弦高を決めるにあたっては、駒上の弦の間隔の好みや、ボウイングクリアランスの好みを知る必要がある。
これらは、楽器が許す限り、プレーヤの好みに近づけることができる。楽器が許す限りというのは、楽器の形による制限があるからである。例えば、ボウイングクリアランスは、いくらでも大きくできるわけではなく、大きくしていくにつれて、E線が弾きにくくなったり、G線を弾くときに弓が楽器のCバウツに当たるということが起こる。大きくするのが良いかどうかは別にして、どのくらい大きくできるかは、楽器の形による。
駒上の弦間隔も、指板の幅による制約があるし、狭くする方も、その奏者が使う最大音量で弾いたときに弦が隣の弦に当たらないところまでである。
これらをまとめると、「弦高」を好みに調整したいと思うとき、
1)駒上の弦間隔
2)ボウイングクリアランス
3)弦と指板の距離
を考える必要がある。他にもあるのかもしれない。基本的には、今の状態を基準として、どの方向に変えたいか考えるとよいのではないか。
しかし、もうお気づきと思うが、弦間隔やボウイングクリアランスを好みの状態に保ったまま、弦高を好みの値にするためには、指板の形がそのセットアップに適した形でなければならない。指板の形が適正でない状態では、弦高を優先するかボウイングクリアランスを優先するかどちらかを選ばなくてはならない。
つまり、弦高を適正に調整するためには、それにふさわしく指板が調整されていることが必要である。
2011年1月16日
2011年1月10日
プレーヤとセットアップ1
真にプレーヤの立場には立つことは難しいけれども、プレーヤから見たセットアップを考えてみたい。今まで書いてきた事の繰り返しや、また違うことを書くかも知れない。ご意見があれば是非お寄せ下さい。
プレーヤとして、セットアップに関して知っておいた方が良いことは何だろうか。
単純化して言えば、楽器がより良く鳴るためのセットアップに関しては主にリペアラの領分であるように思われる。加工や調整などは結果が分かればいいのであって、具体的なやり方についてプレーヤが詳しく知っても悪くはないが、直接的に必要なことではない。それらは、いわばリペアラの内部事情である。乱暴に言ってしまえば、楽器の鳴りに関するセットアップは、リペアラと楽器の関係の中で行われるように思う。プレーヤが如何なる音を望もうとも、もともと持つ楽器の特性は変えられないからである。
一方で、セットアップには、プレーヤのスタイルや好みが強く反映される内容がある。弦高や指板の形など主に演奏のしやすさに関する事である。当然、全てのセットアップは音に影響がある。演奏のしやすさは、楽器の鳴りに大きく影響される。しかし、合理的なセットアップが許す範囲で、楽器の鳴りからある程度切り離して決められる部分については、リペアラは楽器との関係だけなく、プレーヤの好みやスタイルを知らなければ詰められない。プレーヤにとって重要なのは、コントラバスのセットアップにおいて、プレーヤのスタイルや好みが重要なのはどの部分なのかを知っておくことではないだろうか。
個別の話に入る前に、重要な前提として何よりもまずお勧めしたいのは、「標準的なセットアップを試す」ことである。リペアラによって、何が標準か差があると思うが、大体において常識的な線というものは存在すると思う。
どのレベルのプレーヤにとっても、まず最初に「標準」に近いセットアップからスタートすることは、楽器の個性をわかりやすくし、遠回りなようでも、目的のセットアップに近づく王道ではないかと思う。
プレーヤとして、セットアップに関して知っておいた方が良いことは何だろうか。
単純化して言えば、楽器がより良く鳴るためのセットアップに関しては主にリペアラの領分であるように思われる。加工や調整などは結果が分かればいいのであって、具体的なやり方についてプレーヤが詳しく知っても悪くはないが、直接的に必要なことではない。それらは、いわばリペアラの内部事情である。乱暴に言ってしまえば、楽器の鳴りに関するセットアップは、リペアラと楽器の関係の中で行われるように思う。プレーヤが如何なる音を望もうとも、もともと持つ楽器の特性は変えられないからである。
一方で、セットアップには、プレーヤのスタイルや好みが強く反映される内容がある。弦高や指板の形など主に演奏のしやすさに関する事である。当然、全てのセットアップは音に影響がある。演奏のしやすさは、楽器の鳴りに大きく影響される。しかし、合理的なセットアップが許す範囲で、楽器の鳴りからある程度切り離して決められる部分については、リペアラは楽器との関係だけなく、プレーヤの好みやスタイルを知らなければ詰められない。プレーヤにとって重要なのは、コントラバスのセットアップにおいて、プレーヤのスタイルや好みが重要なのはどの部分なのかを知っておくことではないだろうか。
個別の話に入る前に、重要な前提として何よりもまずお勧めしたいのは、「標準的なセットアップを試す」ことである。リペアラによって、何が標準か差があると思うが、大体において常識的な線というものは存在すると思う。
どのレベルのプレーヤにとっても、まず最初に「標準」に近いセットアップからスタートすることは、楽器の個性をわかりやすくし、遠回りなようでも、目的のセットアップに近づく王道ではないかと思う。
2010年12月30日
2010年12月23日
アメリカから来たベース2
チューニングマシンの下は、オリジナルのニスのようである。
楽器のニスは、使われるうちに擦り減ったり、汚れで表面が劣化したりして、痛む事がある。使い込まれた感じになって風情もあるけれども、楽器として使う以上は何らかの補修をした方が良いようである。古いヴァイオリンで良い味になっているものでも、それなりの楽器でそれなりの手が入っているものならば、ニスは修復してあるもののようである。
ニスは、木質を保護するために塗られているから、ニスが無くなると、汗や汚れは木に直接染み込んでしまう。この状態が続けば、その部分の寿命を短くしてしまう。これを防ぐため、リタッチしたり、保護のためのコーティングをしたりする。これは、ニスを塗りなおして、ピカピカにしてしまうのとは違う。オリジナルのニスが多く残っていた方が良いのは確かだ。楽器の経てきた時間を尊重しつつ、楽器を保護するための修理であり、多くの良い楽器ではなされている事のようである。
例によって、チューニングマシンも手入れした。研磨剤で磨いてしまうと、ピカピカになってしまう。それでは艶が出すぎて、艶消しである。
左がクリーニング後で、右がクリーニング前である。右の方は表面に汚れがあり、緑青の色で少し緑がかっている。一見微妙な差とも思うが、一見した印象に与える影響はあなどれない。何となくボロい感じの楽器に見えるか、何となく古くて良い物に見えるかの差は大きいと思う。
楽器のニスは、使われるうちに擦り減ったり、汚れで表面が劣化したりして、痛む事がある。使い込まれた感じになって風情もあるけれども、楽器として使う以上は何らかの補修をした方が良いようである。古いヴァイオリンで良い味になっているものでも、それなりの楽器でそれなりの手が入っているものならば、ニスは修復してあるもののようである。
ニスは、木質を保護するために塗られているから、ニスが無くなると、汗や汚れは木に直接染み込んでしまう。この状態が続けば、その部分の寿命を短くしてしまう。これを防ぐため、リタッチしたり、保護のためのコーティングをしたりする。これは、ニスを塗りなおして、ピカピカにしてしまうのとは違う。オリジナルのニスが多く残っていた方が良いのは確かだ。楽器の経てきた時間を尊重しつつ、楽器を保護するための修理であり、多くの良い楽器ではなされている事のようである。例によって、チューニングマシンも手入れした。研磨剤で磨いてしまうと、ピカピカになってしまう。それでは艶が出すぎて、艶消しである。
左がクリーニング後で、右がクリーニング前である。右の方は表面に汚れがあり、緑青の色で少し緑がかっている。一見微妙な差とも思うが、一見した印象に与える影響はあなどれない。何となくボロい感じの楽器に見えるか、何となく古くて良い物に見えるかの差は大きいと思う。
2010年12月15日
指板が剥がれたら3
外からニカワを流し込む方法は、接着面を綺麗に出来ないので、その分信頼性は下がる。
ボタン部分を外から補強する方法もあるが、今回は、ボルトによる補強を行うことにした。メタルワークについては賛否もあると思う。しかし、必要に応じて使い分ける事は、コストの面も含めて、選択肢を増やす事になるのではないだろうか。
ボタンへの直接的な固定ではないが、ボルトによる接合には強度がある。また、ネックは消耗するパーツであり、将来継ネックなどによって交換される。交換されれば、ボルトも取り去られ、今回の修理跡は消えてしまう。さらに、使っている間に再びネックが緩んだ場合には、再度ニカワを入れ、ボルトを再び締め直してまたしばらくは延命出来る。これらが、ボルト補強の利点である。
ボタン部分を外から補強する方法もあるが、今回は、ボルトによる補強を行うことにした。メタルワークについては賛否もあると思う。しかし、必要に応じて使い分ける事は、コストの面も含めて、選択肢を増やす事になるのではないだろうか。今回は、内側からのネジ止めがあるので、ネックを外して完全な修理を行うには、オープンリペアになる。しかし、今の指板の厚みや、ネックの状態からは、これらを存続させるためだけに、表板を開けるのは費用の面からも妥当でないように思う。指板交換や継ネックが必要になった時に、或いは、他の故障で表板を開けなくてはならなくなった時に、合わせてネックの根本的な修理を行う方が合理的なのではないか。その時にボタンもグラフトできるわけである。
ボタンへの直接的な固定ではないが、ボルトによる接合には強度がある。また、ネックは消耗するパーツであり、将来継ネックなどによって交換される。交換されれば、ボルトも取り去られ、今回の修理跡は消えてしまう。さらに、使っている間に再びネックが緩んだ場合には、再度ニカワを入れ、ボルトを再び締め直してまたしばらくは延命出来る。これらが、ボルト補強の利点である。ボルト穴を埋めて、目立たないようにニスをかける。穴は、見えなくはならないが、今回の場合は、ほどほどに見えていた方が良いと思う。原則、修理をした跡をなるべく分からなくする方が良いのは当然である。しかし、これは、スタンダードで広く認知されている方法であればの話ではなかろうか。楽器の接合面の殆ど全てがbutt jointなのも、そのためではなかろうか。内部に何か特別な事をした場合には、将来全く事情を知らない人でも、一見してどのような修理をしたのか分かるようにしておく方が、楽器にとっても良いのではなかろうか。
2010年12月10日
指板が剥がれたら2
2は無いはずだったが、ネックの付け根に問題があった。
ネックとネックブロックの間の接合が緩んでいる。ネックの付け根部分だけでなく、裏板のボタンも動いている。ボタンはパフリングを境に切れていて、ネックを支える役割を果たしていなかった。
ブロックとネックの接合だけが緩んでいる場合、この部分は、弦を張ると押しつけられる場所なので、ボタンがしっかりついていさえすれば、楽器として機能するので、見ただけでは分からないと思う。
この楽器は、ブロックとネックの接合が緩んでいて、しかも、ボタンがパフリング部分で切れている訳だから、ネックが取れないのがおかしい。しかけは、楽器の内部にあった。
以前のオープンリペアの時に既にボタンは破損していたようで、この時の修理者は、補強として内側からネックをネジで固定していた。この2本のネジだけで、ネックをもたせていた事になる。木口へのネジ止めで、よく持ちこたえた。
ネックがブロックと精度良く接合され、接着がしかるべく行われている時、全体の接着面積に対するボタンの比重はそれほど大きくない。しかし、ひとたびブロックとネックの間が緩めば、ボタンは最後の砦となる。ボタンとネックの間の接着は、繊維方向が一致した木端同士の接着だから、ネック周りの接着面では最も信頼性が高い。従って、ボタンに問題がある場合、何らかの補強が必要と考える。
外から補強する方法もあるが、この楽器の場合、ボタン部分に焼き印があり、外からの補強は避けたかったのではなかろうか。内側からネジをもんでいると言う事は、オープンリペア故だと思うが、これでは、増し締めが難しい。また、同じ理由でネックを外すことも難しい。
次善の方法になるが、第一段階として、ネックの隙間から、なるべく沢山のニカワを流し込んでクランプで固定し、ブロックへの接着を行った。
ネックとネックブロックの間の接合が緩んでいる。ネックの付け根部分だけでなく、裏板のボタンも動いている。ボタンはパフリングを境に切れていて、ネックを支える役割を果たしていなかった。
ブロックとネックの接合だけが緩んでいる場合、この部分は、弦を張ると押しつけられる場所なので、ボタンがしっかりついていさえすれば、楽器として機能するので、見ただけでは分からないと思う。
この楽器は、ブロックとネックの接合が緩んでいて、しかも、ボタンがパフリング部分で切れている訳だから、ネックが取れないのがおかしい。しかけは、楽器の内部にあった。
以前のオープンリペアの時に既にボタンは破損していたようで、この時の修理者は、補強として内側からネックをネジで固定していた。この2本のネジだけで、ネックをもたせていた事になる。木口へのネジ止めで、よく持ちこたえた。
ネックがブロックと精度良く接合され、接着がしかるべく行われている時、全体の接着面積に対するボタンの比重はそれほど大きくない。しかし、ひとたびブロックとネックの間が緩めば、ボタンは最後の砦となる。ボタンとネックの間の接着は、繊維方向が一致した木端同士の接着だから、ネック周りの接着面では最も信頼性が高い。従って、ボタンに問題がある場合、何らかの補強が必要と考える。
外から補強する方法もあるが、この楽器の場合、ボタン部分に焼き印があり、外からの補強は避けたかったのではなかろうか。内側からネジをもんでいると言う事は、オープンリペア故だと思うが、これでは、増し締めが難しい。また、同じ理由でネックを外すことも難しい。
次善の方法になるが、第一段階として、ネックの隙間から、なるべく沢山のニカワを流し込んでクランプで固定し、ブロックへの接着を行った。
2010年12月7日
指板が剥がれたら
指板が剥がれたら、ネックにかかる負荷を減らすため、すぐに弦を緩めた方が良い。
状態にもよるが、基本的には、駒が倒れない範囲で、できるだけ緩めるのが良いと思う。指板は、弦のテンションを支える役目も果たしているので、指板が剥がれるとネックは弦のテンションに負けて変形してしまう。楽器店への移動の時に駒が倒れた時の事を考え、表板を傷つけないよう、テールピースにはタオルなどの布を巻いておけば安心である。
指板は完全に取れてしまっていた。前回作業した時の記録を出して見るとメモがあり、その時は、剥がれている訳ではなかったが、接合面のクオリティに疑問はあった。指板に限らず、接着に強度があるかどうかは、外から見ただけでは分からない。前回の時点では、疑問はあったものの、剥がれは無かった。
幸いにも、ネック側には破損が無く、指板のごく一部が欠けてネック側に残っただけで、綺麗にはがれていた。この点では、接着の状態が悪かったのが幸いしたと言える。剥がれた面には、ニカワやらその他の接着剤が色々ついていたので、クリーニングした。上の写真はクリーニング後である。一部、強く着いている指板のかけらはそのままにしてある。
ともかく、以前ドレッシングしたものを再度ドレッシングする事になったので、少しサービスさせて頂いた。
状態にもよるが、基本的には、駒が倒れない範囲で、できるだけ緩めるのが良いと思う。指板は、弦のテンションを支える役目も果たしているので、指板が剥がれるとネックは弦のテンションに負けて変形してしまう。楽器店への移動の時に駒が倒れた時の事を考え、表板を傷つけないよう、テールピースにはタオルなどの布を巻いておけば安心である。 * * *
ケースを開けたら、指板が剥がれていたとのことで、弦を緩めた上で、お持ちいただいた。
幸いにも、ネック側には破損が無く、指板のごく一部が欠けてネック側に残っただけで、綺麗にはがれていた。この点では、接着の状態が悪かったのが幸いしたと言える。剥がれた面には、ニカワやらその他の接着剤が色々ついていたので、クリーニングした。上の写真はクリーニング後である。一部、強く着いている指板のかけらはそのままにしてある。クリーニングすると、指板とネックの間の接合面は、意外にも精度があり、大きな修正は必要なかった。問題は、製作時でなく、途中の修理にあったのだろう。
先の作業時には、凸凹に接着された状態のままでドレッシングした訳だから、接着面を平坦にして貼り直すと、指板の表面は狂ってしまう。
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