2007年12月19日

サドルクラック


写真は、英語ではサドルクラックと呼ばれる、サドルの角から伸びる割れだ。

表板は、湿度に応じて巾方向に伸び縮みするが、サドルの繊維方向は表板と直交していて、伸び縮みが殆ど無い。表板の巾が広がろうとする場合は問題無いが、乾燥して縮もうとするとサドルが突っ張る事になって、表板に割れが入る。

この割れを防ぐには、サドルの両端に隙間を設けておく事が必要だ。隙間が大きすぎてもみっともないが、ピッタリに入れてあるサドルも良さそうで良くないのである。もちろん、隙間をあけるのはサドルの両端のみで、表板の木口と接する面は密着していなくてはならない。この部分は弦からのテンションを表板に伝える重要な部分だからである。

この楽器の場合も、サドルの両脇にクリアランスが無かったか、少なかったかのいずれかが原因ではないかと思われる。サドルはオリジナルではなく、後の仕事かもしれない。本当は、サドルを一旦外してクリアランスを取る必要があるが、周辺の表板の状態も考えて、今回は外さずに割れの補修をして様子を見ることにした。

サドルの話とは関係無いが、サドルの上方に2箇所のダボ跡が見える。このようなダボは、表板を開けて修理を行う時に、位置決めのために使う。この楽器は、過去に少なくとも2回は開けて修理をされたということかも知れない。

0 件のコメント: